「嘘」をついても泥棒になるわけではない

人間は誰しも清廉潔白ではありません。ところがなぜか、親になると、「私は嘘をつきません。完璧な人間です」という心持ちになってしまう方がいます。

これは、「嘘つきは泥棒の始まり」の呪縛があるからだと思われます。小さい子の小さな見え透いた嘘に、無意識にその子の将来像を重ねて「この子は犯罪者になってしまうのでは?」と怯える親御さんをたくさん見てきました。

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でも、よく思い出してみてください。親御さん自身にも心当たりはありませんか? 幼い頃「つい」ついてしまった小さな嘘……でも、泥棒になってはいませんよね。

「嘘も方便」という言葉もあります。むしろ、大人になってから「方便」の嘘を上手につくことで、人間関係を円滑に築いてきた部分もあるのではないでしょうか。

たとえば体調があまりすぐれない、気分がそれほど乗らないときに友人との約束を「ごめんね、今日、どうしても家の手伝いを頼まれて断れなくて」と言ってキャンセルできたりすることは、実は「ペアレンティング・トレーニング」ではとても大切だと考えます。

外の社会の人間関係も大切ですが、その前にまず自分のからだの状態を健康に保つために、家庭生活を整えるのを優先することを強く推奨します。そのためには「嘘も方便」は一つのスキルになりえます。

不安があるから嘘をつく

「子育て科学アクシス」で学ばれている親御さんの成功事例をご紹介しましょう。

KUMONに通っているノリカ(小4)。「ちゃんと宿題やってるよ!」といつも口では言うのですが、プリントを確認してみると毎回、全然やっていません。もうすでにバレバレなのですが、「ペアレンティング・トレーニング」を学んでいるお母さんは、しばらく「泳がせる」ことにしました。

そしてある日――。白紙のプリントをノリカに見せながら、「真っ白で何も書いてないように見えるんだけど、あぶりだしたら文字が浮き上がってくるのかな~?」とついに聞いてみました。「何だ、バレてたんだ!」と呆気にとられるノリカ。その後は、「今日も宿題やってない!」と正直に話すようになったそうです。

お母さんが「何で正直に言うようになったの?」と聞くと、「嘘をついてもお母さんにはすぐにバレることがわかったから、やめた」とノリカ。嘘がバレてからというもの、「宿題を全然やって行かないから、今日も先生に怒られたんだよね~」などということも普通に話すようになったそうです。

子どもは、本当は嘘なんてつきたくないのです。親に怒られないか、嫌われないかと不安だから嘘をついてしまう。「嘘をついてもすぐにバレる」とわかれば、親に嘘をつくメリットはなくなります。嘘の根底にあるのは、子どもの不安なのです。