早稲田のラガーマンだったときに恩師から教えられたこと

生まれは足立区の北千住でして、親の仕事の都合で千葉県に住んだ後、江戸川区に移ってきました。早稲田で過ごした大学時代はラグビーに熱中し、部ではナンバーエイト(背番号8番でフォワードに指示を出すリーダー的なポジション)を務めていました。そんな学生で体ばかり鍛えていたもので、もうちょっと頭も鍛えておけばよかったなと今になって後悔しています(笑)。

ただ、大学のラグビー部では尊敬する指導者からたくさんのことを学びました。ラグビーは、ボールを持ったら蹴っても投げてもいい、走ってもいいと選択肢が多いスポーツです。あるとき、試合後に自分のプレーが正解だったのかどうか悩んで指導者に相談したら、「お前がそのとき正しいと思ったことが一番いいんだ」と言われたのです。

この言葉は非常に胸に残っていまして、今もよりどころにしています。区には優秀な職員がたくさんいて、施策などは彼らと話し合いながらつくっていくわけですが、決めるときはやはり自分がしっかり決めなければいけない。最終判断をする、最終責任を取る。それが自分の役割だと思っています。

水害リスクの話を聞いて、江戸川区に住むのは怖いと思った方もいるかもしれません。でも、豊かな水は区の魅力でもあります。1973年に日本で初めて親水公園をつくったのも江戸川区ですし、区民にどんなところが魅力かと聞くと「水と緑」と答える方はとても多いです。ですから、水のリスクと水の恵み、この両方を同じようにしっかりと伝えていきたいです。

水の恵みを享受しつつしっかりリスクを把握してほしい

2018年の西日本豪雨をはじめ、各地の水害による被害を見ていると、ハザードマップで3メートル浸水と色分けされたエリアはその高さまで浸水するなど、やはりハザードマップの通りになっています。このことからも、皆さんにハザードマップをしっかり見ておいてもらうことがいかに重要かわかります。この点は、行政から区民へ繰り返し伝え続けていかなければなりません。

それでも、地球温暖化の影響もある現在、もし国の被害想定を超える台風や大雨が発生したら、実際の避難状況や被害規模には未知数の部分があります。しかし、未知数だからこそ私たちは考えうる限りの手を打っていくつもりです。今後起こりうる水害について、皆さんもぜひ自分ごととして考えていただけたらと思います。

撮影=市来朋久
斉藤猛・江戸川区長
(取材・構成=辻村洋子)
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