数十年前から予見されていたのに…
高齢化は止まらない。総務省統計局によると昨年9月時点で、日本の65歳以上の高齢者人口は、過去最多の3627万人に達した。総人口に占める割合は29.1%と、こちらも過去最高を記録している。
このうち75歳以上の人々に焦点を絞ると、総人口に占める割合は初めて15%を超えた。団塊の世代が75歳を迎え始めたためだ、と統計局は分析している。
人口ピラミッドの異変は数十年前から予見されていたが、歯止めはかからなかった。東京在住のジャーナリストであるティサンカ・シリパラ氏は、政治外交専門誌の米ディプロマットへの寄稿を通じ、「日本では世界中のどの国よりも速く高齢化が進んでいる」と現状を報じている。
彼女は論じる。高齢者人口の比率が高まり、年金制度と医療制度に限界が来ていることで、高齢でも働き続けなければならない社会が到来した。そして、「日本では老後を生き抜くことが難しくなっている」と。
生き残るために低賃金の仕事を引き受ける
もっともシリパラ氏は、高齢者を一方的な弱者と見ているわけではない。アメリカでは9月の敬老の日(祖父母の日)が必ずしも定着していないなか、日本では国民の祝日になっており、高齢者に十分な敬意が払われているとの喜ばしい側面を紹介している。
だが、「しかし同時に、高齢者たちは『永遠に』働くための準備をしており、職場に戻ったり、生き残るために低賃金の仕事を引き受けたりしている」とも述べ、日本社会の現状に懸念を表明している。
厚生労働省が昨年7月に発表した「令和3年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は、女性が87.57歳、男性が81.47歳だった。ドイチェ・ヴェレは「医療の進歩により、多くの日本人がこれまで以上に長生きできるようになっている」と指摘する。だが、社会制度がこれに追いついていない側面があることも確かだ。
高齢者人口が拡大する一方、昨年11月までの過去1年間の出生数は、厚労省の速報値によると80万4000人台にまで落ち込んだ。第2次大戦以降、最低の水準だ。ドイチェ・ヴェレは、寿命向上と出生率低下の両輪により、日本の医療・年金制度は変革を迫られていると指摘する。
妻は「働きながら死ぬなんて、とても悲しい」と語った
シリパラ氏はディプロマット誌への寄稿のなかで、高齢社会白書のデータを引いている。各国の60歳以上の人に、今後、収入を伴う仕事をしたいか尋ねた結果、「収入の伴う仕事をしたい(続けたい)」と答えた人の割合が40.2%に上っている。アメリカの29.9%、ドイツの28.1%と比較し、日本人の労働意欲は高い。