生活保護は性善説で成り立っている
どういった方法が予想されるか。社会問題に詳しい弁護士の大城聡氏に聞いた。
「少なくとも虚偽申告をしているということにはなるでしょう。そもそも生活保護を受給している場合、収入があれば申告をしなければいけない。法の抜け道という話ではなく、ただ単にルールを破っている(=収入の申告をしていない)ことが見つかっていない、というだけの話のように思えます」
偽名を使って生活保護を受給していた人間が逮捕されるといった事案もある。それはつまり、生活保護は偽名でも受給できるということだ。ならば、収入の無申告などわけない。行政の制度に不備があり、ザルだということか。
「いえ、収入の申告は義務です。そのため、そこはある程度、“収入があった被保護者は申告をする”という性善説によって成り立っています。全員の生活実態を隅々まで把握することは不可能です。働く際に偽名を使ったりほかの人の口座を使ったりしているかもしれない。ダンボール手帳の仕事とシルバー人材派遣の仕事も、行政とはいえ第三セクター的なポジションにある。厳密な身元確認はできていないはずです。そもそも、高齢者に仕事を与えることが本分なわけですから」
不正防止にフォーカスすると、救いたい人を救えない
生活保護の不正受給をゼロにするためにあらゆる対策を取れば、それは生活保護のハードルを上げることに繋がってしまう。それこそ「水際対策」の横行が再び起こるはずだ。悪用している人が責められるべきであって、見つけられなかった行政を問い詰めるのは賢くない。「それは性善説だ」と言われそうだが、性善説を前提としているからこそ本当に困っている人を助けることができるのだ。
ギャンブルで金を使い果たした生活保護受給者が大勢押しかけているのにもかかわらず、全員が二周もらえる量の食材を毎回用意する炊き出し団体もきっと同じ考えだ。不正をする人のことをメインで考えていたら、救いたい人を救えない。生活保護の制度も炊き出しも、悪用する人にフォーカスを当てているわけではないのだ。