両親は預貯金3000万円があるが、全然足りない

今回の相談は、ひきこもりの当事者(42)の兄(45)からの依頼でした。依頼者はすでに親元からは自立して、別に家庭を築いています。「実家にいて仕事をしていない弟の将来が心配だ」というのです。

当初は自分だけで相談に行きたいと希望されましたので、「お兄様だけでは分析ができません」とお断りいたしました。すると、両親(父73、母71)に家計シミュレーションの必要性をご説明されたそうで、後日両親と一緒に相談に来られました。

相談の面談では、最初に両親から貯蓄の残高や毎月の収支の状況を伺います。事前に質問事項をお伝えしていましたので、比較的スムーズにヒアリングができました。詳細の分析は後日に報告するとして、まずは聞き取った内容をパソコンに入力し、概算でのシミュレーションを行いました。

ともに70代の両親の収入は合わせて320万円の年金のみ。持ち家の住宅ローンはなく、預貯金は約3000万円あります。

シミュレーションの結果を見てみると、親が生きているうちは、毎月の支出はおおむね両親の年金で賄えますので、それほど貯蓄が減少することはありません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/RobertoGennaro)

ところが、両親が十数年後にふたりとも亡くなると(試算では、平均余命を考慮してそれぞれ87歳と91歳で他界と想定)、年金収入が途絶えたちまち家計の収支が赤字に。貯蓄はみるみる減っていきます。今から23年後、本人が65歳から国民年金(老齢基礎年金)を受給したとしても、通常の生活をしていた場合は貯蓄の減少を食い止めることはできず、70代前半には両親から引き継いだ貯蓄が枯渇してしまうことになりそうです。「人生90年」時代のこれからを踏まえると、この年齢で貯蓄が尽きてしまうのは、少し早すぎます。

「まだ今の段階では“概算”ですので、正確な分析ではないのですが、老後に家計が行き詰まってしまう可能性があります」と私は申し上げました。相談者のお兄さんも、両親もため息をついています。