野党がスキャンダル追及をしている限りは脅威ではない
ただし、二階氏が「5月選挙」に1本に絞って政局シナリオを練っているわけではない。話はそう単純ではないのだ。二階氏とて、やはり新型コロナの感染者の推移は慎重に見極めようとしている。4月1日、東京都の感染者は475人にのぼった。この段階での衆院選は難しいことは分かっているし、有権者の支持は得られないことも、理解している。
その一方で、この時期に解散風をあおることのメリットも熟知している。ずばり野党への牽制だ。菅政権誕生後、「学術会議」の任命拒否問題、吉川貴盛元農相らへの鶏卵大手から現金授受問題、「桜を見る会」で安倍氏元秘書の略式起訴、森氏の女性蔑視発言、そして総務省などの官僚への接待問題。次々とスキャンダルが浮上してきた。
野党側からすれば、突っ込みどころは満載だった。ところが、どれだけ突っ込んでも野党側の支持は上がらない。言い換えれば野党がスキャンダル追及に血道を上げている間は、自民党には脅威ではない。
適度にスキャンダル追及をさせておき、あまり追及の手を強めると解散するぞ、と脅して野党を「びびらせる」(自民党ベテラン秘書)という高等戦術を二階氏らは描いているのだろう。その結果、早期解散となってもいいし、10月の任期満了に近づいてもいい。
官邸の「菅派会合」は解散風をあおるためか
自民党幹部たちも二階氏と足並みをそろえている。下村博文党政調会長は「追い込まれ解散という構図はつくりたくない」と早期解散論をあおる。
菅氏側近の坂井学官房副長官は4月1日、首相官邸で、菅氏の「親衛隊」の色彩の強い無派閥若手議員の会「ガネーシャの会」を首相官邸で開いた。この会合は、「官邸の政治利用」として批判を受けたが、これは承知の上での開催だ。
「菅側近たちが、官邸に招かれた」という非日常の光景を演出することで、解散風を強める効果を狙ったと考えればいい。
この戦術で、野党側は少なからず「びびって」いる。二階氏の戦略は功を奏し始めている。内閣不信任案の提出を口にして今回の解散機運に火をつけた格好となった安住氏には「軽率な発言だった」と、批判するささやきが内部にあるという。