官僚的な対応に終始する厚生労働省の女性担当官

16日間のクルーズが終わり、本当は前日、2月4日に下船のはずだった。しかし隔離によりさらに同じような長さの日数が加わった、それがなんと大きく全身にのしかかってきたことだろう。私たち2人とも、その落胆については触れようともせず、話もしなかった。話せば話すほど、落胆がひどくなることくらい二人ともわかっていたからだ。

それよりもやらなければならないこと、薬の確保だ。

船内放送では、乗客は部屋にとどまれという情報のほかに、厚生労働省の電話番号も放送していた。しかも各部屋備え付けの電話で通じると案内された。私たちは、船が外洋に出れば、その電話ですら通じなくなると焦っていた。先ほどからフロントと薬手配でかけ合っていた妻が、フロントではらちがあかないとわかるや、私より先に厚生労働省に電話をした。

先方の回答はまず船医の判断が優先されるので、船の医務室に問い合わせてくれとのこと。なんという官僚的な対応なのか、検疫は厚生労働省の判断で行っているのではないか、ならば厚生労働省も少しは動いてもよさそうなものだ。頭に血がのぼって次に私が電話をする。答えは同様。

今このように書いてきて思うのだが、厚生労働省はあらかじめ、私たちのこのような問い合わせを予想していたのではないか、あまりにも決まりきった即答であったからだ。若い女性がなんの躊躇ちゅうちょもなく言い放っていた(しかし実際は、薬は厚生労働省が発注し、乗客に配った。いつ窓口が船医から厚生労働省に変わったのか、私たちは知らないままだった)。

「年寄りばかりの船内、大問題になると思います」

当然のことながら、船の医務室には電話が通じない、次に再度フロント、これも同じくつながらない。私たちは混乱し、うろたえていた。おそらく混乱していたのは私たちだけではなかったはずだ、各部署が全部そうだと予想された。船は、昼ごろ私たちの最大の心配事をよそに、まるで無視するかのようにきっぱりと外洋に出ていった。私たちがうろたえた原因は、この船による“無視”が恐怖だったのかもしれない。

9:12 A記者とのショートメール交信

私「これから年寄りにとっては絶対必要な常備薬確保に動かなければなりません。先ほど私と妻がこの常備薬の件で、厚労省の窓口にTEL。まずは船内医師の判断になるとのこと。年寄りばかりの船内、大問題になると思います」

A記者「薬について同様のお話をほかの乗客の方からもお聞きし、先ほど高血圧の薬が切れ、困っていることを原稿にしました」

薬問題はどうやら多くの年寄りの問題となっているようだった。