海外要因に支えられてきた日本経済に暗雲

中国経済の減速から、ユーロ圏経済の落ち込み懸念も高まっている。7月まで13カ月連続で、中国の新車販売台数は前年同月の実績を下回った。中国で販売を増やしてきたフォルクスワーゲンなどドイツ自動車メーカーの業績は悪化している。

その影響から、4~6月期のドイツ実質GDP成長率は前期から0.1%減少した。ドイツ経済の減速鮮明化を受けて、ユーロ圏経済の先行き懸念も高まっている。

近年の日本経済は、海外の要因に支えられて持ち直してきた部分も多い。少子化、高齢化に加え人口減少が進む中、わが国の経済が自律的に持ち直すことは容易ではない。見方を変えれば、わが国の経済は海外経済の変調に対してぜい弱な側面がある。政府中心にこの問題にどう対応するかが重要だ。

2011年11月以降、外国為替市場では米国のゆるやかな景気回復に支えられて徐々にドル高・円安が進んだ。2013年4月の“量的・質的金融緩和”を皮切りに日銀は異次元の金融緩和策を進めた。それが、ドル高・円安を勢いづかせた。円安は企業業績や海外で保有する資産の価額などを“かさ上げ”し、株価上昇や“官製春闘”での賃上げを支えた。

米中の景気が落ち込めば、日本経済の減速は避けられない

今後、円高が進むとわが国の経済にはマイナスの影響が出ることは避けられない。すでに米国経済は減速している。ここから先、円安トレンドを期待することは難しい。今後、米国の景気が一段と落ち込み、それとほぼ同じタイミングで中国経済の減速が鮮明化すると、日本経済の減速は避けられないだろう。今すぐにそうした展開が起きるとは考えづらいが、先行きは楽観できない。

景気への懸念が高まった際、日銀が追加緩和に踏み切る可能性はある。ただ、すでに日銀の政策は事実上の限界を迎え、大きな効果は期待できない。むしろ、さらなる金利低下は銀行などの収益力をさらに低下させ、経済にマイナスに働く恐れがある。

それがわかっていても、円高が進み国内経済の先行き懸念が高まると、市場参加者は日銀に追加緩和を求め始める。日銀は何らかの形でその期待に応える必要がある。その上で重要なポイントは、緩和的な金融環境を生かし、中長期的観点から構造改革を進めることだ。

世界各国を見渡すと、わが国の政治は相対的に安定している。政府はその状況を最大限に生かすべきだ。規制緩和などを進めて成長期待の高い分野にヒト・モノ・カネの経営資源が再配分され、企業が“ヒット商品”の創造(イノベーション)が目指される環境が整備されればよい。それは、わが国経済の円高への抵抗力を高めることにもなる。

ヒット商品が創出できれば新しい需要が生まれる。それが、わが国経済の実力(潜在成長率)の引き上げにつながる。それに向けた改革が進むか否かが、わが国経済の先行きを大きく左右するだろう。

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