骨、筋肉量は40代でピークアウトする

ロコモは、静かに長い時間をかけて骨、筋肉、関節などをむしばんでいく。それはどのようなメカニズムなのか。大江氏はこう解説する。

「骨や筋肉の量はおよそ20~30代でピークを迎えます。特に骨は、成長ホルモンが出る成長期に強くなり、男女ともに20歳ごろに骨量の最大値(ピークボーンマス)を迎える。そこから20代、30代、40代前半ぐらいまで平坦に推移し、女性の場合は40代後半から、男性の場合は60歳ぐらいから下降線をたどります」

「骨を強く保つためには、ピークボーンマスをできるだけ高くし、平坦な時期を長く保って、下降のカーブを緩やかにすることが必要です。適度な運動で刺激を与え、適切な栄養を取ることで、それが可能になることが最近の研究でわかってきました。若いときからロコモを意識して対策をするかしないかで、将来ロコモになるリスク度は大きく異なります。特に女性は、男性と比較するとピークボーンマスが低いので、衰えが早くなってしまう。そのため、骨や筋肉量がピークを越える40代から対策を始めることが不可欠です」

「日本人のロコモ度」全国1万人調査

働き盛りの人たちにもロコモの問題点を知ってもらうため、「ロコモ チャレンジ! 推進協議会」では、昨年7月から大規模な全国調査を行っている。狙いは日本人のロコモ度の性別・年代別基準値を定めることだ。

「これまでロコモとは無縁だと思っていた若年層にも、自分のロコモ度を同世代の基準値と比較することで、人ごとではなく、自分ごととして捉えるきっかけにしてほしい」と、大江氏は語る。

10月中旬、東京・丸の内でも、全国調査の一環として「ロコモ度テスト」の体験会が行われた。

「ロコモ度テスト」とは、日本整形外科学会が2015年に定めた2段階の「臨床判断値」に基づき、ロコモの進行度を測ることを目的としたものだ。下肢筋力を測る「立ち上がりテスト」、下肢の筋力、バランス能力、柔軟性などを含めた、歩行能力を総合的に評価する「2ステップテスト」、直近1カ月の身体の痛みや日常生活に必要な動作、社会的活動に関する25の質問に答えてもらう「ロコモ25」の3種類の調査で構成される。

「立ち上がりテスト」は、片脚で高さ40cmの台から反動をつけずに立ち上がり、3秒間キープ。これができない場合は、両脚で40cm、30cm、20cm、10cmと、低い台へと移って立ち上がれるかどうかを調べ、立ち上がれた一番低い台がテストの結果となる。「2ステップテスト」は、2歩分の最大歩幅(cm)を測定し、身長で割って2ステップ値を算出する。「ロコモ25」の質問票に回答を記入すれば完了だ。

それぞれの高さの台から立ち上がる(撮影=プレジデント社書籍編集部)

40cmの台から片脚で立ち上がれない、2ステップ値が1.3未満、「ロコモ25」の結果が7点以上、のいずれか1つでもあてはまる場合は、移動機能の低下が始まっている「ロコモ度1」。両脚でも20cmの高さから立ち上がれない、2ステップ値が1.1未満、「ロコモ25」の結果が16点以上、のいずれか1つでもあてはまる場合は、ロコモが進行している状態の「ロコモ度2」と判定され、それぞれ対策が示される。