介護離職した子の生活の支えは「親の年金」
「介護生活はどんな家族でも例外なく大変なものですが、なかでもパラサイト・シングルの人が介護を担う状況は、見ていてつらくなることが多いです」
Iさんの説明によると、こんな状況です。
まず、仕事を持っている人。同居しているわけですから、介護の負担をすべて背負い込むことになります。親元から独立し結婚という苦労が伴うことを避け、気楽に暮らすことを選んだ人にいきなり介護の苦労が押し寄せる。精神的に追い込まれますし、仕事と介護に両立は難しいと受け止め離職する人も少なくありません。
仮に離職すれば当然収入はなくなる。介護生活は親の年金と貯えが頼り。将来の展望が描けない日々が続くことになります。そして介護が終わった時、つまり親を看取った時点で、貯えはほとんどなく、しかも高齢で仕事が見つからない現実に直面して途方に暮れるといったケースが少なくないわけです。
「利用者さんのなかには、そうした不安を切々と語られる方がいますが、聞いていてつらくなりますよね。ただ、この状況になったのは親御さんのために介護を頑張ろうという思いがある。親子の“情”が介在している分、我々も気持ちを汲んで対応できるのですが……。対応の仕様がなく、親御さんがいたたまれない状態になるのが、ニートの方が介護するケースです」
ニートが介護すると何が問題となりやすいのか。
第一の障害として、ニートの人は、ケアマネージャーをはじめ介護サービスを提供する人たちとの接点を持ちたがらないそうです。
「SOSを出す状況にもかかわらず、我々が訪ねて行ってもなかなか家に入れてくれないわけです。社会に対して閉じてしまっているというか……。対人関係が築けないからニートになったのかもしれませんが、介護に関しては、そんなことを気にしている場合じゃないと思うんですけどね」
それでも根気強く説得して接点を持ち、介護サービスの必要性を説明しても、次なるハードルが待ち構えているといいます。お金の問題です。
「親御さんが要介護になると、金銭の管理は子であるニートの人がすることになります。そのお金の使い道は自分優先で、介護サービスをはじめ親のためには極力使いたくないという態度を示すんです。話を聞いて必要と思われるケアプランを作って行っても、こんなサービスはいらないから削れと言われてしまう。結果的に、親御さんは劣悪な状況に置かれることになります」