楽観主義者と悲観主義者とは、よい出来事と悪い出来事の原因についてまったく違った説明をする。

たとえば、“セールスに失敗した(悪い出来事)”場合、典型的な楽観主義者は、その原因は自分ではなく状況の側にあり(たまたま客の機嫌が悪かった)、それは一時的(客はいつも不機嫌であるわけではない)で、影響は限定的(一度の失敗で自分のセールスマンとしての価値が損なわれるわけではない)と説明するが、典型的な悲観主義者は、その原因は自分の側にあり(自分は口べただから失敗したのだ)、それは繰り返され(口べたは急には直らないから次のセールスもダメだろう)、その影響はセールスの失敗にとどまらない(自分は何をやってもうまくいかない)と説明する。

そこで、楽観主義者と悲観主義者の出来事についての説明の仕方の違いに着目して、このアンケートでは、人々の楽観主義、悲観主義の度合いを測定するために、6つの仮想の「よい出来事」と6つの「悪い出来事」を示し、それぞれについて、(1)その原因は自分側にあるのか、他人や状況にあるのか、(2)一時的か永続的か、(3)その影響はその出来事だけのことか、それ以外のことにも及ぶのか、の3つについて説明を求め、それに基づいて楽観主義スコア、悲観主義スコアを算出するようになっている。

このアンケートには2つの特徴がある。1つは、それがセールスマンの営業成績や定着率に対する高い予測力を持っていることであり、いま1つは、うつ診断の有力な補助ツールでもある、ということである。

普通、うつの診断には、うつ症状リスト中の該当する症状を数え、それが多いほど、重篤と考えられているが、このアンケートでは、うつ症状を問うことは一切ない。にもかかわらず、悲観主義スコアはうつの精神疾患と深い関係がある。セリグマン博士は、うつ病と診断された大学生と普通の大学生についてこのアンケートを実施したところ、うつ病の大学生は普通の大学生にくらべて、悲観主義スコアが明らかに高かったと報告している。

すでに述べたように、悲観主義者は、悪い出来事について、その原因が自分の側にあり、それは繰り返され、生活の他の面にも悪い影響があると説明するが、悪い出来事に遭遇するたびに、このようなネガティブな認知が反芻されると、しだいに自信がなくなり、無力感に陥り、周りとの関係を否定的にとらえ、将来についても悲観的な見方をする、いわゆるうつ思考になったり、「自分の存在が無意味で、生きているのが辛い」といったうつ気分になる。