やなせたかしは本質的に「詩人」だった

やなせ先生は漫画家であり、作詞家でありましたが、そもそも本質的に「詩人」なんですね。詩人というのは、詩が好きだったり、詩的なことを考えたりしますが、一番大切なものは詩心で、「詩心はある人とない人がいる」と先生は言っていました。

やなせ先生は、「日陰に咲いてた花がかわいそうだから日向に出したら、なおぐったりしちゃった」なんていう詩も書いているんですね。先生は、日陰に咲いている花をかわいそうと思う感性を持っていて、それを何とかしようと思って、実際に行動もしちゃう。でも、やっぱり日陰が好きな花はあって、それは日陰にいないと弱ってしまうし、突然無理やり日向へ持っていっちゃうと枯れてしまう。それは人間も同じですよね。そういう小さなことを詩に書いているのが、いかにもやなせ先生らしいんです。

やなせたかし・暢夫妻
写真提供=やなせスタジオ
やなせたかし氏と妻の暢さん

「アカシアの木の下の犬」という詩も印象的でした。アカシアの木の下に犬が一匹いて、何をしているかと思うと、フンをしているんです。それが終わったら砂をかけて、自分はフンなんかしたことないような顔をして群衆の中に紛れ込んでいくという詩なんですね。なんでそんな詩が書けたかというと、やなせ先生は犬を飼っていて、散歩するときに犬がフンをしたくなると悲しそうな目をする。それを見てこの詩ができたんだよと話してくれました。