2011年に登場したアップルの音声アシスタント「Siri(シリ)」。当時は革新的だったが、ChatGPTなど賢いアシスタントが躍進する今、海外メディアで使い勝手の悪さが相次いで報じられている。今年4月には日本でも新機能「アップル・インテリジェンス」を投入したアップルだが、AI開発の遅れは挽回できるのか――。
スマートフォンに表示されるアップルのAIアイコン「Siri」=2024年6月11日
写真=NurPhoto via AFP/時事通信フォト
スマートフォンに表示されるアップルのAIアイコン「Siri」=2024年6月11日

スマートなアップル製品のなかで悪目立ちするSiri

洗練されたデザインで、スマートな機能を、わかりやすく使いこなせる。アップル製品への主立ったイメージは、こんなところではないだろうか。他社よりも製品が割高だったり、込み入った機能が省かれていたりすることもあるが、日常的に必要な機能の9割を、他社製品よりも9割少ないストレスで使える印象だ。

スタイリッシュなデザインと、総合的な使い勝手の良さが受けているのだろう。調査会社IDCによると2024年第4四半期、スマホでは国内シェアの54.4%を1社単独で占めている。2位以下のシャープ(11.9%)、レノボ(10.0%)、グーグル(7.7%)、サムスン(3.9%)と大きく水をあけた。スマホ以外では、iPadやMacの人気も根強い。

ところが、現在のアップルには明確に不評を買っている機能がある。音声アシスタントのSiriだ。14年前のデビューから歳月が流れ、ChatGPTやGeminiなど人間の意図を汲んで応答する生成AIが普及しつつある今、もはや旧式のツールとなった。

評判は本国アメリカでも芳しくない。ニューヨーク・タイムズ紙は、Siriは答えを返すのに時間がかかるうえ、簡単な質問にも答えられないケースが多いと指摘する。記事は、「(全米プロバスケットボールの)ボストン・セルティックスの試合はいつ?」と聞くと、Siriは「申し訳ありませんが、現在その情報を入手できません」と返すだけだったと具体例を挙げている。

何を頼んでも「すみません、わかりません」

もちろん、決まり切ったタスクを頼む限り、Siriはかなり便利に使える。単に「3分」と言えば、カップ麺のタイマーをスタートしてくれる。「牛乳をリマインドして」と言えば、買い物リストに項目を追加してくれる。