老後に待ち構えている時間は現役時代とほぼ同じ

今度はこの定年後に生まれる自由時間と、新卒から定年まで働いた総実労働時間とを比べてみましょう。

厚労省の資料によると、過去30年間の一般労働者(パートタイムを除く)の年間総実労働時間を見てみると、概ね2000時間あたりで推移しています。

新卒年齢は人によって異なりますが、22歳から65歳までの43年間働いたと仮定すれば、労働時間は8万6000時間(2000時間×43年間)にのぼります。60歳で定年を迎えて再雇用先や転職先などで働く人の場合、残りの5年間は定年前より労働時間が短くなる可能性はありますが、あくまでも目安として、私たちは社会に出てからこれだけの時間、働き続けてきたことになります。

つまり、男性ではこれまで働いてきた労働時間とほぼ同じくらいの時間が、女性ではそれ以上の時間が、定年後に「自由時間」として待ち構えているのです。

日本語は世界で最も習得が難しい言語のひとつ

それでは、話を英語に戻しましょう。私たちが英語を習得するのにどのくらいの時間が必要なのでしょうか?

これについては、議論がかなり分かれます。英語を学び直したい人がどのくらいのレベルからスタートし、どの程度本気で英語を学習するかによって答えは違ってきます。言うまでもありませんが、目指す目標によっても、学び直しに要する時間が異なってきます。

ここで一つ参考になるデータがあります。

アメリカの国務省で外交官などに外国語研修を行っている機関FSI(Foreign Service Institute)では、英語を母国語とする人が外国語のスピーキングとリーディングを学習した場合の言語の難易度を3段階でランクづけしています。

この研究機関は、最も難易度が高い言語を、日常生活に支障が出ないレベルまで到達するには、総時間にして2200時間(88週)必要だとしています。そして、日本語は、中国語、韓国語、アラビア語とともに最も習得が難しい言語(Super-hard Languages)に分類されており、その中でも、とりわけ習得困難な言語だとFSIは指摘しています。

貴島通夫『今からでも遅くない!60代からの英語学び直し術』(プレジデント社)
貴島通夫『今からでも遅くない!60代からの英語学び直し術』(プレジデント社)

このFSIで研修を受けるのは、外交官を目指す、普段から英語以外の第二外国語に高い関心があり、最初からモチベーションが高い人たちです。授業のカリキュラムもタイトです。週25時間、クラスは最大6人の少人数制。さらに毎日3時間程度の自習も求められます。そういう勤勉な人たちにとっても、日本語はスーパーハードな言語なのです。

ここで忘れてはならないのは、FSIの生徒たちは、私たち日本人が中学校と高校で英語を学んできたように、中高では日本語を学んでいない点です。つまり、彼らは事実上ゼロからの日本語学習者なのです。

アルファベットすらまったく知らない日本人が、いきなり英検一級合格を目指すようなものです。学習を始めるスタートラインという意味では、英語を学び直す日本語話者のほうが、一から日本語を学び始めるFSIの生徒より、はるかに有利な立場にあるのです。