国立社会保障・人口問題研究所が発表した世帯数の将来推計によると、1世帯あたりの平均人数は2033年には1.99人となり、2人を下回るという。また、50年には65歳以上の一人暮らしが1083万人と20年比で約47%増加するという推計も出ている。そんな「おひとりさま」時代の定年後をどう生きるべきか、カウンセラーの下園壮太氏に聞いた。
携帯電話を持った手
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優雅なリタイアでも心身は消耗する

人間は環境が変化すると、心身へ大きな負担がかかります。これは誰にでもあてはまる話で、進学する学生であっても、転職して新たな職場で働く社会人でも変わりません。もちろん、定年を機にこれまで勤めてきた会社を辞めた人も同様です。

環境が変わると、人はまず周囲を観察して状況を把握しようとします。そして、状況に適応するために張り切って行動するようになり、無意識のうちにオーバーワークとなってしまうパターンが多いのです。これまで続けてきたことをやめ、新たな環境に適応しようとすることは、それだけで非常に大きなエネルギーを必要とします。

ですが、人間は新たな環境に直面するとアドレナリンが出て一種の興奮状態になるため、自分の心身に負担がかかっていることを自覚することはなかなかできません。これが若いうちであれば、気力も体力も充実しているので大きな問題には至らないケースも多いですが、高齢の方の場合は環境が変わってから1年程度でアドレナリンが切れ、気持ちの落ち込みや体の不調に気付く場合が多いです。

これは「定年後は働かずに過ごす」という人にとっても他人事ではなく、急に働くのをやめることも大きな負担となります。全速力で走っている最中に急に止まったら、転んでしまうのと同じで「今まで会社で当たり前にやってきたことをしなくなる」ということも大きな負担がかかります。

私の経験上、人間が新たな環境に適応できるようになるには、およそ1年程度の時間がかかると私は考えています。環境が変わったからといって張り切りすぎないことを、まず気を付けてください。

また、精神的なストレスが引き金となって体に不調が出ることもあります。体の不調を気にしすぎた結果、心を病んでしまわれる人も多い印象です。もちろん、不調を感じて病院へ行くこと自体は悪いことではありませんが、医師から「病気ではありません。これまでの疲れが出たんでしょう」と言われたにもかかわらず、「どこかに原因があるはずだ」と悪いところ探しを続けて心を病んでしまう人もいます。「退職後、1年程度は疲れやすくなる」ということを知っているだけでも、心身への気遣いは違ってくると思いますし、「ずっと続けてきた仕事を辞めたんだから、これくらいの不調はあって当然だろう」と思えると、心が楽になると思います。

「ムダなこと」を肯定してみよう

定年退職後を健康に過ごすためには、定年前から定年後の生活を考えておくことが必要不可欠だと思います。現在50歳の方であれば、会社で働く期間は長くても15年だと思います。ですが、「人生100年時代」の現在は定年後も人生が35年程度は続くかもしれません。会社を辞めてからの人生のほうが長いわけですから、定年後の長い人生を幸せに過ごすトレーニングをしてみましょう。

現在、会社で一生懸命働かれている人は、「競争」という価値観を強く持っていると思います。「人よりも出世したい」「たくさんの給料が欲しい」と考えるのもそうですし、営業などで「他社よりもウチのほうが優れている」と考えるのも、競争の価値観がベースにあるものです。しかし、定年後はそうした価値観とは無縁の生活が待っています。これまで自分を支配してきた価値観が無価値になってしまうことで、精神的にストレスを感じてしまう人は多くいます。