どこまでも上がり続ける社会保険料
もうひとつは個人の側の変化で、じつは親本では法人の役員が国民年金と国民健康保険に加入することを前提にしていた。
当時も法律上は、役員一人の法人でも社会保険に加入しなければならなかったが、これはあくまでも建て前で、どちらも公的社会保険制度なのだから、家族経営の零細法人は国民年金/国民健康保険と社会保険のどちらか有利なほうを選べばいいというのが実態だった。
人類史上未曾有の超高齢化によって日本の財政は逼迫しており、社会保険料の負担は大幅に上がっている。本書の親本が刊行された2009年当時、厚生年金の保険料率は15.704パーセントだったが、それが現在(2025年)は18.3パーセントになっている。
同じく中小企業が加入する協会けんぽの保険料率は、40歳以上が支払う介護保険料込みで(自治体の平均で)9.39パーセントから11.6パーセントに上がった(同時に、保険料を支払う収入の上限も引き上げられ、高所得の会社員の負担が重くなっている)。
これをわかりやすくいうと、年収600万円のサラリーマン/サラリーウーマンの場合、2009年には(ボーナスをならして)月額50万円の給与に対して約6万3000円の社会保険料が天引きされていたが、それが現在は約7万5000円に増えている。この16年間で、毎月の手取りが1万2000円(年額14万4000円)も減ってしまったのだ。
あなたが給与明細を見て、「会社はベースアップしたというけれど、手取りは逆に減っているじゃないか」と疑問に思ったら、その理由は増税ではなく、社会保険料の負担増だ(会社が支払う社会保険料も同じだけ上がっているので、会社はその分、人件費を抑制しようとするだろう)。
生活が苦しいのは「ステルス増税」のせい
消費税を上げようとすると国会で紛糾必至で、政権がいくつもつぶれるが、社会保険料率の引き上げは厚生労働省の一存でできるので、この「ステルス増税」が常態化している。その結果、日本の社会保障制度の歪みはますます大きくなっている。
会社員が加入する社会保険と、自営業者が加入する国民年金/国民健康保険ではどちらが得なのか。厚生年金の保険料が収入に応じて決まるのに対して、国民年金の保険料は定額(2025年時点で月額1万6980円)なので、この比較は簡単だ。
年収600万円の会社員の厚生年金保険料は、自己負担のみで年額約55万円(会社負担分を含めると約110万円)だが、国民年金なら年収にかかわらず年額20万円強だ。掛け金が少ないと将来の年金は減るが、厚生年金保険料との差額の35万円をNISAで非課税で運用したほうが老後資金はずっと大きくなるだろう。
ここまではシンプルだが、話がややこしくなるのは、国民健康保険の保険料が、社会保険の会社負担分と自己負担分の合計に見合うように引き上げられてきたことだ。
その結果、会社員が自己負担する健康保険料が年額30万円だとすると、生活水準が同じ自営業者は年額60万円の保険料を支払わなくてはならない。そのうえ社会保険では扶養家族の健康保険は無料だが、国民健康保険は本人分のみなので、配偶者・子ども・親など扶養家族がいれば、その分の保険料を別で納めなくてはならない。
自営業者から「国民健康保険の保険料負担が重すぎる」という不満の声が上がるのはこれが理由だ。

