「空き家」という選択もあり

日本国内では、至る所で、「空き家」が大きな問題になっています。

総務省統計局の住宅・土地統計調査(2024年4月公表)を見ると、和歌山県、徳島県、山梨県などは空き家率が20%を超えていて、5軒に1軒が空き家という状況。東京でも空き家率は11%で、10軒に1軒が空き家という状況です。

こうした中で、自治体が地元の空き家情報を集めて、そこに住みたい人を募集し、応募した人に格安で物件を売る「空き家バンク」が注目されています。

自治体から委託を受けた不動産業者などが契約を締結しますが、仲介手数料などが必要ないぶん、割安に物件が入手できます。空き家バンクは、自治体だけでなく、民間のLIFULLアットホームなどでも運用しています。

古い空き家
写真=iStock.com/badahos
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最近は、ネットで「ゼロ円物件」というのもかなり出ています。所有していると固定資産税がかかったり、維持・管理が大変だったりするだけでなく、特定空き家に指定されて行政に代執行されると、高額な費用がかかってしまうといったケースなどもあるため、最近は「ゼロ円」どころか「マイナス物件」といって、買ったらお礼がもらえる物件も出てきています。

ただ、こうした物件は、設備の老朽化や法令違反、再建築不可、隣人トラブル、事故物件などで、持ち主がなんとしてでも手放したいというケースが多いので、手放す理由をしっかりと調べ、納得してから動くようにしましょう。

また、購入費用はかからなくても、固定資産税や取り壊し費用その他でお金がかかるケースも多いので、しっかり調査しましょう。

「持ち家VS.賃貸」の損得勘定

「持ち家」と「賃貸」、どっちが得かというような議論がありますが、今は、どちらがいいと言える時代ではありません。

どちらが得かではなく、まず自分のライフスタイルに合うかどうかということを第一に考えたほうがいいでしょう。

雇用が流動化していて、1つの会社に定年退職まで40年以上勤めるという時代は終わっています。勤め先が変わると、勤め先に便利なところに家を買っても、かえって不便になるかもしれません。デジタル化が進化し、出社せずにリモートで働くという企業も出てきているし、週休3日、4日が可能という会社も出てきています。そうなると、「毎日通勤」ということがないので、地価の安い遠方にマイホームを買っても、それほど問題はないかもしれません。

さらに、老後に1人で暮らさなくてはならないケースはこれからますます増えると思いますが、そうなったら広い家は必要なく、最終的に老人ホームに行くとなれば、家は「終の住処」でなくなるかもしれません。

加えて、物件の老朽化で資産価値がどんどん落ちていくため、マイホームが資産になるという時代も終わっています。

ですから、買うか借りるかの損得よりも、自分のライフスタイルに照らし合わせ、よりよく住むにはどうするのかという選択が必要でしょう。