性被害を繰り返さない取り組みがテレビ局にも求められる

その後、テレビ番組に広告を出すスポンサー企業は、HRDDへの配慮として、子どもの人権を尊重しない芸能事務所に所属するタレントを起用しないと宣言しました。

森崎めぐみ『芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革』(岩波新書)
森崎めぐみ『芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革』(岩波新書)

しかし、どこまで継続的に徹底できているのかはわかりません。本来であれば、企業と放送業者が監視のできる第三者機関を設置するなどをして、二度とこうした事件を起こさないための仕組み作りをしても良かったと思います。

私はビジネスと人権の取り組みを企業とともに進めている弁護士の蔵元左近さんと一緒に民放連にお話をしに行きました。その翌年には、TBSホールディングスが人権救済の機構に加盟しました。

二度と同じ過ちを繰り返さないための取り組みは、今こそ必要だと思います。そしてスポンサーとなる企業が、自社の広告費から報酬を得て働いている芸能人を、フリーランスであっても自社のサプライチェーンの一員と認識して、性被害が起こらないように安全対策を進めることが肝要だと思います。

森崎 めぐみ(もりさき・めぐみ)
俳優、一般社団法人日本芸能従事者協会代表理事

映画『人間交差点』で主演デビュー。キネマ旬報「がんばれ!日本映画スクリーンを彩る若手女優たち」に選出。テレビ『相棒』、舞台『必殺!』など多数出演。代表作は映画『CHARON』。2021年に全国芸能従事者労災保険センターを設立。文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」委員。著書に『芸能界を変える――たった一人から始まった働き方改革』(岩波新書)がある。