ジャニーズ問題が注目され、国連の人権理事会が来日して調査
2023年にBBC放送がドキュメンタリー番組『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』で、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の前代表である故・ジャニー喜多川氏による性加害について取り上げたことで、数十年に及ぶ膨大な被害者が次々に告発する異常事態になりました。
毎日のように被害者の告発が報道される渦中に、国連の人権理事会が来日して調査をしました。差別やジェンダー問題の聞き取りを行う中で、私も芸能の問題の当事者としてヒアリングを受けました。調査の終了にあたり記者会見が開かれて、芸能業界に「心の痛む問題がある」との声明が発表されました。
声明文では、労働条件が搾取的であることやハラスメントの法的な定義を明確にしていないことから、性的な暴力やハラスメントを「不問に付す」文化を作り出していると指摘されました。さらにアニメ業界での極度の長時間労働や、不正な下請関係に関連する問題から、クリエイターが知的財産権を十分に守られない契約を結ばされる例が多いこと、ジャニーズ事務所のタレントの数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれたことを、深く憂慮すべき疑惑として、ジャニーズ事務所のメンタルケア相談窓口による精神衛生相談を希望する被害者への対応は不十分だと指摘されました。

人権理事会メンバーと面会し、感動で涙が止まらなかった
国連が基準とするコンプライアンスの遵守のために、あらゆるメディア・エンターテインメント企業が救済へのアクセスに便宜を図り、正当かつ透明な苦情処理メカニズムを確保して、この業界の企業をはじめとした日本の全企業が積極的に人権デューデリジェンス(HRDD)を実施し、虐待に対処するよう強く促すと、声明を発表しました。
この後、ジャニーズ事務所は被害者救済後の「廃業」を表明し、各テレビ局と民放連(日本民間放送連盟)は「人権に関する基本姿勢」を作りました。
まさか国連から指摘を受けるとは思ってもみませんでしたが、どうにもならない問題を抱えていた人々は「黒船が来た!」と、天の助けのようにありがたく思ったようです。
実際に私も人権理事会として来日した女性と面会をしたとき、感動で涙が止まりませんでした。私たちが暗中模索しながら命がけで活動を続けてきたことを、言葉にしなくても全て理解しているかのように優しく接してくださいました。
きっと困難に立ち向かう世界中の人と接しているに違いないと、彼女の目を見て思いました。人を助けたい人を助けてくれる、そんな神様のような方でした。