「純利潤」のない企業は資金をどう調達すればいいのか
そうだとすると、企業は、何もないところから、新たに貨幣を生み出して、それを元手にして新結合を行なうしかありません。
しかし、誰が、何もないところから貨幣を創造するのでしょうか。それは「銀行」であるというのが、シュンペーターの答えです。銀行とは、貨幣を創造する特殊な機関なのです。
シュンペーターは、「銀行家が貨幣を作ると言っても大きな罪にはならないだろう(*2)」とも言っています。
「銀行が自らに対して請求権を作り出すことでおこなう貨幣創造」とは何のことなのか。「銀行家が貨幣を作る」とはどういう意味なのでしょうか。説明しましょう。

無から貨幣を創造するのは「銀行」
多くの人が、銀行による「貸付け」というものは、個人や企業が貯蓄のために預けたお金を又貸しすることだと思い込んでいます。主流派経済学もまた、銀行は個人や企業から預金を集め、その銀行預金を元手にして、貸出し業務を行なっていると想定しています。
例えば、ある主流派経済学の標準的な教科書は、「銀行は、貯蓄をしたい人々から預金を受け入れ、その預金を使って借りたい人々に貸出を提供することを主な業務にしている(*3)」と説明しています。そして、「貯蓄は貸付資金供給の源泉である(*4)」と強調しています。
このような考え方を「貸付資金説」と言います。
ノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマンは、「すべての個々の銀行は、預金として受け取った貨幣を貸出さなければならない。銀行の職員は、無から小切手を発行することなどできない(*5)」と明言しています。彼もまた、貸付資金説を信じているのです。
しかし、この貸付資金説は、誤りなのです。実際には、民間銀行は、貸出しによって、預金という貨幣を創造しています。