商店街はシャッター通りに、自己破産や10代の妊娠・エイズが増加…日本政府が隠したい「カジノ解禁の負の側面」(帚木 蓬生/Webオリジナル(外部転載)) 『ギャンブル脳』より #3

2018年に強行採択された、通称“カジノ法案”ことIR実施法…。日本にカジノができる未来は迫っており、経済効果をもたらすことばかり喧伝されているが、現実はそう単純ではない。ここではカジノ誘致がもたらす「負の側面」を、長年、精神科医としてギャンブル依存症患者とその苦しみに向き合ってきた帚木蓬生氏の新刊『ギャンブル脳』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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今だけ、金だけ、自分だけのカジノ解禁

スポーツ賭博の解禁やオンライン・カジノの合法化でも分かるように、日本人の考え方の特徴は、「舟に乗り遅れるな」と「経済優先」です。そこには全体を見渡す広い視野もなく、歴史から学ぶという視点もありません。かつて日本がエコノミック・アニマルと言われた通りであり、あと先を考えない刹那主義に今でも染まり切っています。言うなれば、ギャンブル脳の三だけ主義のうち「今だけ」「金だけ」なのです。もうひとつ「自分だけ」というのも揃っているのかもしれません。

何となれば、日本でカジノ解禁の風潮が生まれたのも、カジノによって自分の地方を潤おそうという「自分だけ」の発想だったからです。

日本に存在していないカジノを解禁しようという発想は、二十一世紀にはいろうとする1999年に、突如として出現しました。石原慎太郎都知事による「東京都カジノ構想」です。これは、あと先を考えない東京都の収益を見込んでの「金だけ」「自分だけ」の着想でした。

3年後の2002年に、自分もその利益に浴しようと手を挙げたのが、荒川区と大阪府、宮崎県、岐阜県、石川県加賀市でした。「カジノ特区」を申請したのです。翌年、「第一回日本カジノ創設サミット」がさっそく開催されています。乗り遅れてはならないとする、「今だけ」主義の首長たちが集まったのです。

同じ年の2003年には、さっそく「今だけ」を狙っての「地方自治体カジノ研究会」も発足しています。都知事が花火を打ち上げてからわずか4年の間に、構想は全国に広がったのです。

そして2010年、カジノができれば新規の政治献金が見込めると思った議員たち74人が鳩首します。超党派議員から成るIR(統合型リゾート)議員連盟が結成されます。その後、これには200人以上の議員が参加し、2013年には最高顧問の一人に安倍首相が就任します。不参加は社民党と共産党の議員のみでした。

安倍首相は、このときパチンコ・パチスロ機メーカーのセガサミーの会長とは懇意であり、息子と娘の結婚式にも出席する仲でした。