AI時代はシニアが仕事で輝ける時代
AIが代替する仕事が増える一方で、シニアにとっては働きやすい環境が増えるという意見もあります。その理由は二つあります。
①シニアの身体的なハンデがなくなる
現状、AIには難しいとされているのが「決断する、方向性を決める」といった能力です。データを集計して分析したり、「どうすればよいか」を決めたりすることは苦手なのです。
IT時代は、データの集計も人間が行わなければなりませんでした。パソコンをなかなか覚えられない上司が、ツールをサクサク使いこなす若手にバカにされる、なんてこともありましたが、AI時代はその常識が覆ります。
データ集計と分析はAIに任せればよいのですから、パソコンの使い方をなかなか覚えられなくても、ハンデはありません。
決断力やリーダーシップ、思考力の点であれば、若者よりも経験豊富なベテランのほうが頼りになることも大いにあり得ます。AIを活かして今までよりも多くの情報を集め、よりよい判断ができる可能性が高いのです。
クリエイティブな制作物に関しても同じようなことがいえます。
たとえば、広告に使うコピーを決める場合。AIであれば条件を伝えるだけで、いくつもの文章(下手をすると万単位の)を瞬時に作成してくれます。そうなると、人間にはその中からよいもの(その人にとって一番必要なもの)を選ぶ「目利きの力」や、ヒットに必要な要素をプラスするといった「感性」が重要になってくるでしょう。
一からモノをつくる、最初から最後まで自分でやらなければならないのであれば、若者と比べてシニアには記憶力や体力などのハンデがありますが、感性の勝負となればハンデはありません。
多くの経験をしてきたシニアほど、ありきたりではない独自の感性で活躍できるかもしれないのです。
働くシニアが多ければ元気なシニアも多い
②気軽に働いて老化を防止する
記憶力や体力面といった、シニアのハンデをAIが補助できるとなれば、雇用主側もシニアを雇いやすくなると考えられます。また、コストをかけてAIを導入するほどでもないような小規模な作業は人間がやることになります。体を動かすような仕事も残るでしょう。
こうした環境は、「年金をもらっているけど、もう少しぜいたくがしたい」とお小遣い稼ぎ程度に仕事がしたいという人には絶好のチャンスです。ちなみに、働き続けるほど若々しくいられる、ということはデータでも裏付けがあります。
都道府県のなかで平均寿命が長いことで知られる長野県ですが、かつては真逆の状態であり、平均寿命のデータは下位に位置していました。順位が上昇しはじめたのは1975年以降のことで、2010年には男女ともに都道府県ナンバーワンになりました。
厚生労働省の最新の調査(2020年)では、男性は82.68歳で第2位、女性は88.23歳で第4位です。
なぜ長野県が長寿県になったのか、さまざまな推測がなされていますが、私が考える要因は「シニアの就業率の高さ」です。これまでに長野県は高齢者就業率において、何度も全国ナンバーワンを記録しているのです。
また、長野県では高齢者1人あたりの医療費が全国最低レベルだという調査結果もあり、年をとっても元気な人が多いといえます。