アメリカのエンタメ界を独占してきたハリウッド
ハリウッドは強大であり、エンタメの世界で3大ネットを圧倒している。フィンシン・ルールを追い風にして、テレビ番組も含めてコンテンツを独占するようになったからだ。
だからこそ「ハリウッドマン」ワインスタイン氏は大きな権力を握れたのだ。
逆に言えば、フィンシン・ルールがなかったら3大ネットがエンタメ業界の覇者になっていた可能性がある。公共の電波を独占するだけでなく、膨大なエンタメコンテンツを所有する格好になって。
ちなみに、アメリカでは過去数十年にわたってメディア業界の大再編が起き、3大ネットはハリウッドの巨大コングロマリット(複合企業)にのみ込まれている。例えば、3大ネットの一つABCは米ウォルト・ディズニー傘下にある。
民放テレビ局にいま必要な“ショック療法”
インターネット時代を迎え、日本の民放テレビ業界は経営的にじり貧状態に置かれておいる。
それでも3大ネットと比べればなお強大であり、大型M&A(企業の合併・買収)とも無縁である。「ハリウッドとテレビ局が合体したような特権的業界」であるからにほかならない。
豊富なコンテンツに加えて電波もあるのだから鬼に金棒であり、よほどのことがない限り安泰。稼ぎ頭は報道ではなくエンタメであり、エンタメ路線で頭一つ抜けているのがフジテレビだ。
厳しいのは下請けの番組制作会社だ。どんなに質の高い番組を制作しても、ハリウッドの映画スタジオのようにはなれない。基本的に発注側のテレビ局側に著作権を握られていることが影響している。
民放テレビ局に報道機関としての自覚を促すために、日本版フィンシン・ルールを導入してみてはどうか。アメリカのように20年間にわたって同ルールを適用すれば、民放テレビ局に対して脱エンタメを促せる(テレビ局と番組制作会社の力関係を変えられる)。
「テレビは終わった」とも言われるなか、半世紀前のフィンシン・ルールを持ち出すのに違和感を覚える人もいるだろう。だが、テレビ業界が必要としているのは“ショック療法”だ。