ほとんどの会社は、休職しまた働いてほしいと考えている
同じように、職場で、適応障害などのメンタル不調に陥った人が出たときにも、企業は、組織としてどう改善していくかを考えるものです。休職をためらう人から、職場の上司や経営陣から「アイツ、さぼりやがって」と白い目で見られるんじゃないか、復職したときに嫌味を言われるんじゃないか……などといった心配の声が聞かれることもよくありますが、企業はもっと合理的です。
病気のせいで仕事の効率が落ちているのだとしたら、そのまま働き続けても生産性は上がりませんから、少し休んで健康を取り戻してからまた働いてもらったほうがいいだろうと合理的に考えます。
同時に、社員がメンタル不調になったことを組織の問題として捉えて、職場のストレスを減らすにはどうすればいいのか、その策を練るはずです。私が産業医として、社員の方の面談や、メンタルヘルスケアに関するセミナーを依頼されるのもその一つです。
特に今は、どの業界も人材不足が慢性化している時代。もしもメンタル不調者や休職者が続けば職場の生産性は下がるばかりですから、組織にとって見過ごせない問題なのです。そのため、メンタルヘルスの問題を一社員の問題として放置するのではなく、組織全体の問題として環境改善に力を入れている企業が増えています。
ですから、休むことで後ろ指を指されるのではないかなんて心配する必要はありません。職場に復帰するときにも、元気に戻って来たことを喜んでくれることはあっても、面と向かってあれこれ嫌味を言うような人はさすがにいないでしょう。自分の仕事で忙しいでしょうし、社会人ですから、少なくともメンタル不調で休職していたという事情に気を遣えるくらいには皆さん大人だと思います。

「休職すると人事評価に響くのでは…」という懸念
休職をためらう気持ちのなかには、待遇やキャリアについての心配もあるでしょう。
休んでいる間にポジションがなくなるんじゃないか。
復職後に降格されないか。
仕事を減らされたりしないか。
人事評価に響かないか。
いろいろと心配する気持ちは分かりますが、そういったことはまずありません。休職を経て体調が回復したら、もといた部署・ポジションに戻るのが一般的です。
もしもメンタル不調を招いた原因が、職場の人間関係や仕事内容にあるような場合には本人との相談のうえで異動して再出発という選択肢もあります。また、本人が「今の役職は自分には荷が重いので外してほしい」などと職場に相談して、役職を降りるケースは見聞きしますが、それ以外では、元のポジションに戻るのが基本です。復職後にプロジェクトから外されるんじゃないか、責任のある仕事を任されなくなるのではないかといった心配も必要ありません。