効率的に体を鍛えるためにはどうすればいいのか。立命館大学スポーツ健康科学部の後藤一成教授は「筋力トレーニングといえば『重い重量を扱って、高い負荷をかける』というイメージがあるが、それは2000年代以降の研究で覆されている。軽い負荷でゆっくりと行う『スロートレーニング』を活用すれば、器具を使わなくても十分に筋肉を鍛えることができる」という――。(第1回)
※本稿は、後藤一成『最新のスポーツ科学で強くなる!』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。
「パワー」と「スタミナ」を付けるにはどうすればいいか
スポーツで優れたパフォーマンスを発揮する上で、発揮できるパワーの最大値を高めることは重要です。パワーという言葉は日常会話でもよく使いますが、スポーツ科学の分野では「パワー=筋力×速度(スピード)」を意味します。このことから、パワーを高めるためには「筋力」と「スピード」の双方を鍛えることが必要です。
一方、どれだけ発揮パワーに優れていても、試合が始まって早々に疲労してしまうと困ります。したがって、パワーに加えて、パワーを持続する能力(筋肉のスタミナ)を鍛えることも大切です。この筋肉のスタミナは、専門的には「筋持久力」と呼ばれます。
「筋肉のパワー」や「筋肉のスタミナ(筋持久力)」の向上には、いずれの方法が有効でしょうか?
この点は過去に研究が実施されています。この研究では、若年男性を最大筋力型の筋力トレーニングを行うグループと筋肥大型の筋力トレーニングを行うグループに分類し、各グループともに週2回・8週間にわたり筋力トレーニングを継続してもらいました。
8週間に及ぶトレーニング期間の前後で、大腿部の筋肉のパワーを専用の筋力測定機を用いて評価すると、最大筋力型のグループは筋肥大型のグループに比較して約1.5倍増加率の高いことがわかりました。これに対して、筋肉のスタミナ(筋持久力)は、筋肥大型のグループが最大筋力型のグループに比較して約1.5倍効果の大きいことがわかりました(図表1)。
この研究結果は、筋肉のパワーを高めるには最大筋力型の筋力トレーニングが、筋肉のスタミナを高めるには筋肥大型の筋力トレーニングが効果的であることを示しています。