本人は本当に東大を希望しているのか
しかしここまで話を進めてきて思うが、そもそも悠仁さまは東大に行きたいのだろうか。また、本当に東大を受験されるおつもりなのだろうか。ご本人の意向を無視して、周囲だけが盛り上がっているようにもみえる。
東大は日本でも有数の大規模な大学である。東大は、文系であるならば官僚志望、理系であるならば実験装置を使うような学部の研究者になりたい場合には、メリットがあると思われる。もしくは、NHKや政府系機関など、東大生を多く採用する企業に就職を希望している場合も、東大を目指す価値はあるだろう。ちなみに私の入っていたサークルでは、卒業後に弁護士と官僚になる人の割合が非常に高かった。こうした職に就く人たちは、大学時代に培った人間関係が、就職したのちに役に立つことは間違いないだろう。
また理系でも、予算などでは、東大は他の大学を圧倒している。大規模な実験装置があるところとないところでは、研究の進展が異なるのは当然である。
しかし悠仁さまは、農学部志望であるという。ここで挙げたどのメリットにも無関係であるように思われる。
むしろ将来天皇になり、政治的には中立でいなければならないお立場では、多くの官僚と知り合いになるということ自体が、「天皇の政治利用」を避けるうえではリスクになるのではないかという心配もある。また、起業を志す東大学生たちに、悠仁さまが「広告塔」として利用されかねないリスクもある。
悠仁さまに合う大学とは
ひょっとしたらいまは多少変わっているのかもしれないが、そもそも東大は、基本的には面倒見もよくはなく、何事も学生の自主性に任せている大学である。自分が教員になってみて初めて、世の中にはこれほど学生の面倒を丁寧に見て、ニーズにこたえようとする大学があるのかと、びっくりしたものだ。
その意味ではおそらく学習院大学は、皇族の入学を前提としてできた官立大学だけあって、規模からしてもカルチャーからしても、絶妙であるように感じる。秋篠宮夫妻のような「キャンパスの恋」が実ったのも、そうした穏やかな環境を抜きにしては考えられないのではないだろうか。
さて、悠仁さまはどの大学に進学されるのだろうか。悠仁さまが東大に合格したとしても、「不正」や「裏口」ではない。既存の制度を利用して、合格するだけのことになるだろう。
ただその場合の国民感情としては、「本来合格するかもしれなかった、努力を重ねてきた受験生」を、1人押しのけて東大に入ったと考えるひとが一定数いる。
愛子さまは、東大に一般入試で合格できる実力があるという噂もありながら、そうはなさらなかった。そしてそれは、愛子さまへの敬愛へとつながっている。
天皇としての適格性と、東大に入ったという栄光と、どちらをとるのかが問われるようなかたちになってしまい、悠仁さまには非常に気の毒である。
大学は、得難い経験をし、生涯の友を得る場所でもあることを考えれば、教員としては専門性が高く、こぢんまりとした穏やかな大学をお薦めしたい気がする。
しかしいずれにせよ、悠仁さまが選択なさるしかないのだろう。