ヒューマンエラーを減らすにはどうすればいいのか。北九州市立大学の松尾太加志特任教授は「人と人とのやりとりをなくせばミスは減るが、ゼロにはできない。AIや機械にも苦手なことはある」という――。

※本稿は、松尾太加志『間違い学 「ゼロリスク」と「レジリエンス」』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

スーパーでタブレットを使用する人
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機械は人間の機能が「外化」されたもの

18世紀の産業革命は人間の生活や社会に大きな変化をもたらした。そして、それ以降のさまざまな技術の進展が私たちの生活スタイルを変え、仕事の内容も変わってきた。

これまで人間が行っていた仕事の中には、機械に置き換わっていったものも少なくない。それは、機械のほうが効率的で間違いをしないからである。人間が行えば必ずヒューマンエラーを起こしてしまうなら、機械に任せたほうがよい。そのため、これまでに人間の仕事の数々が奪われていったとも言える。

そして、ITやDXの進展による情報化は、単に産業革命の延長線上にあるのではなく、質的に大きな変化をもたらしている。さらに人工知能が実用的に利用されるようになると、特定の仕事だけが機械化されるということではなく、ドラスティックに人間の仕事や役割が変わってしまう可能性を秘めている。

機械は、人間のある特定の機能が外化されたものにすぎなかった。車や飛行機は人間の歩くという機能が外化したものであり、さまざまな工作機械は人間の手足の動きが外化したものである。そして、コンピュータは脳が外化したものと言われていたが、AIやロボットは人間そのものが外化されてしまうような存在であり、さまざまな場面で人間に代わって仕事をするようになるかもしれない。

では、もっと人間が関わらなくなれば、ヒューマンエラーは今よりも減るのだろうか。