正常性バイアスだけでなく、日常的に起こる楽観バイアスも、重大なケースに繋がることがあり、注意が必要です。
タイタニック、二度目の悲劇もバイアスが原因?
楽観バイアスが影響して、その本人が亡くなったと思われる事故も起きています。2023年6月にアメリカで起きた潜水艇沈没事故です。
これは、1912年4月に北大西洋で沈没した豪華客船「タイタニック」の観覧ツアーをおこなっていた会社の潜水艇が、水圧に耐え切れずに圧潰、乗員・乗客5人全員が亡くなる事故でした。この乗員の一人が、ツアー会社のCEOだったのです。
タイタニックの残骸は、深海約3800メートルの位置にあります。そこに行くための潜水艇は、その水圧に耐えられる設計にしなくてはいけません。
しかし、BBCニュース(2023年6月22日)によると、タイタニックの観覧を敢行していた会社の元ディレクターが、検査報告書で潜水艇に対する懸念を表明していたそうです。「重大な安全上の懸念を呼ぶ数多くの問題が指摘されていた」とのことで、このディレクターは「潜水艇が極限の深さに達すると、乗客に危険が及ぶ可能性を強調した」のですが、会社から解雇されたとのことです。
事故で死亡した5人の中には同社のCEOも含まれているので、本当に大丈夫だと考えていたのでしょう。これは、楽観バイアスに囚われていたと推測されます。
しかし、当事者たちからすれば予防が非常に難しいものでもあります。何か重大なことが起きてしまった後で、初めて「あれはバイアスだったのか」と気づくこともあるためです。
そのため「楽観バイアスは誰にでも生じ得る」と肝に銘じ、常に自分に問い掛けることが大事です。いざというとき、楽観バイアスがもたらす「大丈夫だろう」は命取りになり得ます。なるべくならば、同じ轍を踏まずに役割を全うしたいものです。