顔の上下半分の画像から「笑顔」と「怒り顔」を見分けた
犬は飼い主の全体的な様子から、状況を判断します。しかし、文字通り飼い主の「顔色」を見て、喜びや怒りなどの情動を読み取ることもできます。
犬は「笑顔」と「無表情」を見分けられることが、研究によってわかっています。さらに、顔のどの部分を手がかりにして表情を識別しているかを調べるテストでは、顔の上下半分の画像だけで「笑顔」か「怒り顔」かを見分けられたこと、また、犬にとって初めて見る人の顔画像でも同じように見分けられたことから、単なる目や口の変化だけを捉えているのではなく、それらが示す「表情」を手がかりに識別していることがわかったのです。
また別の実験では、ネガティブな表情や声より、ポジティブな表情や声を出している飼い主により近づいたという結果も。不機嫌な人に近づいてもいいことはありませんし、機嫌の良い人の側にいればおやつをもらえるかもしれません。人の表情を読み取って情動を理解する力は、うまく共生するために必要な能力として身についたものだと考えられます。
オオカミにはできない「あざと顔」で世話を焼かせる
ちょっと困ったような上目遣いで飼い主を見上げる、独特の表情。この顔をされるといたずらを許してしまったり、おやつのおかわりをついあげてしまったり……。犬の飼い主なら誰しも心当たりがあるのではないでしょうか。
この表情は、目の周りの筋肉がオオカミよりも発達したことでできるようになった、犬ならではのもの。眉に当たる部分が吊り上がって目が大きくなり、何かを訴えかけるように見えます。見る人の、守ってあげたい、世話をしたいという欲求を引き出す表情です。実際に、こうして人を見上げることができるシェルターの犬は、里親が見つかりやすくなるという報告もあります。
また、2017年に発表された研究によると、犬はオオカミに比べて人を見つめたり頼ったりすることが多いことがわかりました。さらに犬とオオカミの遺伝子を解析して比較した結果、ある遺伝子の変異が犬のひとなつこさに関わっている可能性があるともいわれています。特異的な目元の表情と生まれ持ってのひとなつこさで、上手に世話を焼かせるのだと考えられます。