イントロダクション
コロナ禍の中で混雑した電車に乗るのを避けるため、自転車通勤をする人が増えたといわれる。自転車は身近で便利な移動手段だが、健康への効果も大きく、ジョギングに比べてひざや足首への負担が小さいなどの利点もあるようだ。
では、どのくらいの時間、どのように乗れば、どんな効果が期待できるのだろうか。
本書は、自転車を健康づくりに効果的に活用する方法について、数々の実験結果やデータ、生理学の知見に基づいて紹介している。
自転車走行は、とくに急がずにこいだ場合にも、歩行に比べて心拍数が上昇しやすいという。また、同じ運動強度の歩行と自転車運動とでは、自転車運動のほうが糖代謝の活性化が進み、血糖値を下げる効果が高いという実験結果も紹介される。
著者は、名古屋市立大学副学長・高等教育院長、同大学院理学研究科教授。神戸大学大学院教育学研究科修了。名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科助教授などを経て2017年より現職。専門は応用生理学、バイオメカニクス、健康科学。
2.運動強度から見る自転車と身体の関係
3.身体が変わる「自転車の効果」
4.自転車をもっと楽しむために
運動時間がつくれない人にこそ自転車がおすすめ
健康づくりのために、運動が必要なことは誰もが知っています。では、どの程度の運動が必要なのでしょうか。米国スポーツ医学会は、健康づくりのための運動として「50%程度の運動強度で、1日に30分間、週に5回、または70%程度の運動強度で、1日に20分間、週に3回の有酸素運動を行う必要がある」としています。息が切れてもう動けないというときの運動強度を100%とし、その半分が50%の運動強度だと考えてください。
しかし、その運動時間をつくるのが難しい、という忙しい方も多いことでしょう。そこでおすすめするのが自転車を通勤や通学、買い物などに取り入れることです。
歩行または自転車走行で1分間運動したときのエネルギー消費量を比較した結果があります。自転車でゆっくり走ると、歩行と比べて1分間あたりの運動量は減っています。ところが、スピードを上げると、時速15キロメートル(一般的な自転車の速度)のあたりから、早歩きよりもエネルギー消費量が多くなり、時速18キロメートルでは、大きな差が出ています。