固くなった広背筋には要注意

日ごろは意識しない背中の筋肉ですが、人間の体の構造上、とても重要です。「広背筋こうはいきん」と呼ばれる背中の大きな筋肉の一つは、肩甲骨や上腕、骨盤などに付着しています。この広背筋が固くなると、あらゆる不調を引き起こすと言っても過言ではありません。

背中の周囲の筋肉が不自然に引っ張られるので、肩こりや巻き肩、腰痛、O脚などを誘発し、呼吸も浅くなります。筋肉が固くなると血流が滞り、リンパの流れも悪くなって、代謝も下がります。体はどんどん元気を失っていきます。

「背中が固くなっているなら、それこそ整体やマッサージに通えばいいのでは?」こう思われるかもしれません。確かにマッサージで一時的にはほぐれます。ただし、施術を定期的に続けない限り、すぐに元に戻ってしまいます。時間とお金を捻出し続けることになります。

自宅で仕事中に背中の痛みに苦しむ若い女性
写真=iStock.com/Charday Penn
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マッサージや整体よりも「ゆるめる」がいい

背中の固さは自分で改善できます。大切なのは、体の緊張をほぐして、背中の筋肉を「ゆるめる」ことです。ウォーキングスタジオを主宰し、これまで7000人以上の生徒さんに直接指導してきた中でたどり着いた私の結論が、これです。

かつては私自身も、厳しい食事制限と運動でリバウンドを繰り返してきました。背中が固い状態のまま、どんなにストイックに運動をがんばっても効果は出ませんでした。体形のコンプレックスは改善されず、肩こりや腰痛もひどくなる一方。でも、あることがきっかけで、体がどんどん変わっていくことを体感しました。それは「余計な力を入れずに、ラクに立ち、ラクに歩く」という姿勢と歩行の指導者との出会いでした。

ただラクに立ち、ただ心地よく歩くということを意識するだけで、こり固まっていた体がゆるみ、本当に軽くなっていったのは衝撃でした。悪化する一方だった腰痛が1カ月でなくなり、猫背や巻き肩も改善したのです。

それだけではなく、将来的には手術が必要と言われていた臼蓋きゅうがい形成不全や、足が痛くて歩けなかったモートン病も解消しました。首こりや肩こりも軽くなり、O脚も改善していくという大きな手ごたえを得ることができました。

背中をゆるめることで得られる3つのメリット

背中がゆるむと、骨は本来の正しいポジションに戻ります。無理やり戻すのと違い、勝手に戻ってくれるのです。それまで動かせていなかった筋肉が動かせるようになります。自然と呼吸は深く安定し、血流やリンパの流れも改善し、さらに背中がゆるんでいく。この良いスパイラルの中で、体が整い、不調が改善していくのです。