※本稿は、ソフィー・モート『やり抜く自分に変わる1秒習慣』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
いつも堂々巡りに陥る
「本当に、しっかり判断しなくちゃいけないときに、堂々めぐりに陥るんだ。いつも、冷淡で人を歯牙にもかけないような人たちに魅力を感じる。最近も三人の代理人候補に会ったんだけど、自分に言い聞かせたよ。今回は僕と少しは手をつないでくれる人を選ぼう、と。温かく支えてくれる人が必要だったからね。
三人と面接したら、『ゴルディロックスと3匹のくま』って童話で女の子が三つのお粥を味見したときみたいだった。一人目はあけすけに物を言いすぎるし冷淡。二人目は親切すぎて、正直なところ気詰まりだった。でも、三人目はちょうどいい感じだった。親切で、穏やかで、きちんと境界線を引いてくれる。三人目が求めていた相手だ、と確信して、その人を選んだ。ところが、どうやらまたいつものように、冷淡で人を歯牙にもかけない人物を選んでしまったようなんだ。契約を結ぶ最初の数週間こそしっかり対応してくれたけど、今はほとんど連絡がない。またやってしまったよ。さすがに自分にイライラしている」
――作家仲間のジョーダン(著作権エージェント――作品のスポークス・パーソンで、アイデアを磨く手伝いをし、執筆の報酬を出す出版社につないでくれる人物――を探していた)
心理学を理解していても同じことを繰り返してしまう
ジョーダンは作家仲間であるだけでなく、同じ心理学者であり、私の元指導教官だ。
私は研修医の頃、患者の記録と質問リストを抱えて、目をキラキラさせながら大急ぎで指導セッションに向かったものだ。期待のまなざしで彼を見つめ、知恵を授けてくれるのを今か今かと待っていた。
私から見れば、ジョーダンは何でも知っていたから、私は二つのことを望んでいた――。
一つは、いつか彼に負けないくらい優秀なセラピストになること、そしてもう一つは、私が心にどれだけ多くの欠点を抱えているか、彼に知られずにすむことだ。
当時はまだ信じていたのだ。セラピストのメンタルヘルスは完璧でなくてはいけないし、セラピストには「分別がある」から、私のように人生の選択で堂々めぐりに陥ることなんて絶対にないはずだ、と。だから、一緒に仕事を終えたある晩、ジョーダンから「完璧な著作権エージェント」探しの顚末を聞かされて、私はショックを受けた。こんなに心理学を理解している人が、なぜ同じパターンを繰り返すのだろう? と。ジョーダンはこの話を、私にわざと聞かせてくれた。彼は知っていたのだ。私が彼をあがめていることも、「人間が自分の行動の理由を理解し、別の選択をする方法を学べば、二度と同じことを繰り返さない」と信じていることも。実は……なかなかそうはいかないものなのだ。