18歳でホストクラブに通い出し、看護助手から風俗嬢へ

彼女はしばらくして少し笑うと、「私もだけどね」と言った。

茨城県出身の21歳。地元で看護助手をしていた18歳のとき、ツイッター(現X)で知り合ったホストに「来てみなよ」と誘われ、上京した。昼の仕事もしたが、歌舞伎町のホストクラブに通い出すと、月に十数万円の手取りでは全く足りなかった。すぐに遊ぶ金がなくなり、売春を始めた。「今は風俗嬢一本でやってる」と言う。

聞くと、借金を作ったこともあった。

「担当が優しいのはね、『来られるときでいいし、来てくれるだけで嬉しいから』って言ってくれるの。でも、たまには『掛け(ツケ)でもいいから来て』とか『掛けでいいからこのボトル入れていい?』って言われる。そうするとやっぱり断りづらいよね。手持ちがないのにお金使って掛けを作っちゃうんだ」

大半のホストクラブでは、客のツケを認めている。売り掛けのことで、ホストや客は略して「掛け」と言う。ホストは客に掛けを許し、回収のために来店を促し、また新たに金を使わせる。払えない客には、キャバクラや風俗店などの仕事を紹介・斡旋する。そんな構図がある。女性客がホスト通いから抜け出せなくなるような仕組みだ。

歌舞伎町にあるホストクラブの看板
撮影=プレジデントオンライン編集部
※写真はイメージです

ツケが払えない客には風俗の仕事を斡旋するというシステム

彼女は一時、30万円の掛けがあったという。「遅れるときは遅れてもいいから」と言われたが、豹変ひょうへんしたように返済をせかされることもあった。それでもホスト通いをやめられない。

「担当に優しくされると、恋とまでは言わないけど好きになっちゃう。担当には他の客もいるし、うちも客の一人じゃん。でも負けず嫌いだから、他のお客さんに嫉妬しちゃう。担当にとっての一番になりたくて、深みにはまっていくの。風俗店の仕事は、自分から担当に頼んで紹介してもらったんだ」

終始ほがらかな彼女は、少し酔っているのか、路上に立ったまま、自身がかって抱えた鬱屈うっくつまでをあけすけに語ってくれた。

「前はもっと酷い状況のときがあったんだ。担当をめぐる嫉妬で思い詰めちゃって、自殺願望みたいな気持ちになったこともある。『死んだら楽になるかな』『死んだら振り向いてくれるかな』って思うの」

ホストクラブに通い始めて5年。気を病むことはなくなり、最近はほどよく楽しめているという。それでも最後にこうつぶやいた。

「私もそうだったから、飛び降りちゃう女の子の気持ち、少し分かるかもしれない」

夜の街の闇を垣間見た気がしたが、知りたいのは、飛び降りた女性のことだった。礼を言い、私たちは聞き込みを続けた。