下請けにいじめをする自動車部品メーカー
相談者のように、「理不尽に強要されることに甘んじるのが情けない」と感じる方は、ご自身の価値基準を大切にし、判断や行動をされたい方だと思います。
下請けに対するいじめが有名と言われる自動車部品メーカーがあります。
私は、そのメーカーにいじめられる下請けからではなく、いじめている側のメーカーから、「下請けいじめをする、この体質に耐えられない」といって退職した人を複数知っています。
勤めていれば一生安泰なはずのメーカーをそんな理由で辞めることになるとは、本人たちも思ってはみなかったでしょう。
しかし、そうした告白をしてくれた人たちは、自分の考えや判断にプライドを持っているように見えました。
私自身は、勤務したメーカーが、残業代を支給しないと知り、入社初日から転職することを考えていたことがありました。初日で辞めることも考えましたが、当時は就職難で希望の職を見つけにくかったことと、その会社での仕事内容が魅力的だったために、思いとどまったのです。
結局私は5年間ほどその会社にお世話になり、仕事には熱心に取り組んだつもりですが、残業はあまりせず、就業時間以降は、資格取得の勉強をしたり、大学院へ通ったりしました。
会社のことも、仕事そのものも好きでしたが(残業代くらいはもらえる環境に移るために、習慣的に勉強をしていたので)、頻繁に行われる飲み会などにもほとんど参加しませんでした。
しかし、これが所属部門のカルチャーに反していたので、当時はよく非難されたものです。
解決策は会社にあらがうことだけではない
どうにか乗り越えていく術というのは、こうした例のように、自分の考えを優先して、会社の慣行にあらがったり、転職してしまうことばかりではありません。
むしろ理不尽なことがあっても、その組織で上手くやっていく方法を模索するのは必要なことでしょう。私自身、残業代が支払われないことに甘んじているわけにはいかないと考え、上記のように行動しましたが、もともとは、安易に転職を考えたいほうでもなかったのです。
勤務先の風土や体質に悩み、何を受け入れ、何を拒絶するか――そこでどんな判断をするかが「自分」というものです。
相談者の方には、ぜひご自分らしい答えを見つけ、多くの人たちが苦悩する問題を上手に乗り越えていただきたいと思います。
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。