ジャニーズ事務所は2023年10月2日、社名を「SMILE-UP.」(スマイルアップ)に変更すること、さらに名称を公募して資本関係のないまったく新しい会社を立ち上げることを発表した。会見を取材したライターの村瀬まりもさんは「井ノ原快彦・ジャニーズアイランド代表取締役社長の発言に拍手が起きる異様な空気が漂っていた」という――。

2回目の会見の主役は新会社副社長となる井ノ原快彦だった

「皆さん、ちょっと落ち着いてください。“一人一社一問”という話があった以上、すみません。(記者の抗議に)すごいですね。みなさん冷静に、冷静に話し合いしていきましょうね」

と壇上から記者席に呼びかける井ノ原快彦・ジャニーズアイランド代表取締役社長。2023年10月2日、東京都内でジャニーズ事務所による新会社設立についての記者会見で、欠席したジュリー藤島前社長の手紙を長々と代読した序盤から、この日の主役は彼だった。

会見は被害者への謝罪から始まった
撮影=阿部岳人
会見は被害者への謝罪から始まった

アイドルグループV6(ブイシックス)の元メンバーであるイノッチこと井ノ原氏は、2022年9月から、前社長・滝沢秀明の退所を受け、ジャニーズJr.(ジュニア)の育成を担う子会社ジャニーズアイランドの社長に就任した。それからわずか1年だが、やはりNHKの番組「あさイチ」で有働由美子アナウンサーとコンビを組み、8年間も生放送で司会を務めたライブ感覚とMC力は健在だった。

記者と司会者の「フェアじゃない」「フェアです」というバトル

司会者(元NHKアナウンサー・松本和也氏)に近い右側の最前列には、東京新聞の名物記者・望月衣塑子氏が座っていた。9月7日に開かれた1回目の記者会見では、ジャニー喜多川前社長による性加害のみならず、テレビ局などマスメディアと事務所の癒着についても切り込んだ望月記者は、質疑応答が始まり20分経っても最前列にいる自分が指名されないことに思うところあったのか、マイクを通さずどんどん質問を投げ始めた。その隣にいる尾形聡彦氏(Arc Times編集長)も「(質問者として)当てていただけないでしょうか」と抗議する。

「(この会見は)茶番だ!」という抗議に対し、司会者が「いいえ、まったく茶番ではございません」と返し、「フェアじゃない」「フェアです」、「(司会者は)笑わないでください」「笑ってないです」というやりとりがあるなど、テレビでもネットでも広く生中継されている会見は、混乱しつつあった。そこで井ノ原氏が、再びスピーチする。

「ちょっと一言いいですか。やはり、こういう会見の場は全国に生放送で伝わっておりまして小さな子どもたち、自分にも子どもがいます。ジャニーズJr.の子たちもいますし、それこそ被害者の皆さんが自分たちのことでこんなにもめているのかっていうのは、僕は見せたくないので、できる限りルールを守りながら……。ルールを守っていく大人たちの姿をこの会見では見せていきたいと僕は思っていますので、どうか落ち着いてお願いします」