介護施設に一人で入っても孤独ではない

つまり、人々と交流できることは、幸せの一大条件といえるのです。自由にコンビニに行ける、外に出て公園を散歩できるといったことは、財産や業績などよりも、はるかに大切なのです。

生きることはそれだけですばらしいのですが、たった一人の世界では意味がありません。

私たちは一人でいても、いつでも誰かに連絡でき、行きたいところに行けるなら、孤独ではないのです。誰にも連絡できず、外に出られず、会いたい人に会える望みも断たれているというのなら、それが孤独です。

そう考えると、介護施設で介護士から手厚い扱いを受けている人は、孤独ではないでしょう。

介護施設に入ると、家族はあまり見舞いに来なくなります。まったく面会に来ない家族もいます。しかし、だから孤独だということはないのです。

介護施設に入っている元大学教授の知り合いが数多くいます。

介護施設では、入居者を「さん」づけで呼びます。

私たち医師、とくに大学教授や病院長などをやった人は、常に「先生」と呼ばれてきましたから、「さん」と呼ばれるのは少し屈辱的なのです。

それでも不満を言うことなく施設にいるのは、孤独でないからなのです。

車椅子の高齢者と公園で散歩する介護士
写真=iStock.com/imacoconut
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老年になれば、孤独にならない生き方が重要

私は、晩年の幸福はどれだけ孤独でない生き方ができるかによって決まると考えています。孤独を避けたいと思うなら、最後の日々を過ごす場所で自分が親切にされる方法を考えることが大切です。

若い時は、孤独に耐えて大事をなしとげるといった生き方もあるでしょう。しかし、老年になれば、孤独にならない生き方が重要になります。

「家族といつも一緒でなくては孤独だ」といった狭い考え方をしないほうがいいのです。

人といつでも交流できることは、幸福の一大条件。

自分を発信できていれば孤独ではないのです。