第一の協力者は事務所が調査依頼した再発防止特別チーム

ここで指摘しておきたいのは、そもそもジュリー氏が全株保有の代表取締役社長であるまま実施された再発防止特別チームの調査には、根本的な欠陥があることだ。社員やスタッフなど組織内部の者は報復を受ける恐れがあるため、具体的な証言を差し控える傾向がある。アメリカでも、経営陣が交代したり匿名での証言を保障しなければ、調査内容の信頼性に問題が出る事例が起きている。

この点から言って、ジュリー氏に任命された東山氏や井ノ原氏が経営のトップにいる状態で、再調査をすることは好ましくない。外から全く新しい経営者を呼び、体制を一新してからでないと、具体的な証言が出てこない恐れがある。新会社と補償会社の社長を東山氏が兼任するのも、会社の方針を決める力を外部者に渡したくないという意思の反映かもしれない。

写真左)山田将之弁護士・ジャニーズ事務所チーフコンプライアンスオフィサー、写真右)井ノ原快彦・ジャニーズアイランド社長
撮影=阿部岳人
写真左)山田将之弁護士・ジャニーズ事務所チーフ・コンプライアンス・オフィサー、写真右)井ノ原快彦・ジャニーズアイランド社長

ただ、ジャニーズ事務所が全容を解明し、「タレントを守らない」自らの体質を転換できないのは、事務所だけの責任ではない。変わりたくない、という彼らの意思に寄り添い、それを支える多くの援軍がいるのだ。ここでは4グループの協力者を挙げておく。

第一の協力者は再発防止特別チーム。報道による告発を除けば、彼らが作った調査報告書は現在、まとまった形での唯一の参考資料だ。だが調査の欠如を何度も指摘しているのに、提言では、さらなる調査が必要、という話は消えている。被害認定に当たり、「法律上の厳格な証明を求めるべきではない」という異例の形で救済措置制度を作ることを提言したのは画期的だ。

だが、そのバーターとして、詳細な事実認定を行い、それに基づく的確な対策を提示する、という本来の役割を放棄している。つまりこの報告書自体が、事務所が調査せず隠蔽・放置してきたという事実を結果的に放置する「隠れみの」としての役割を果たしている。

第二の協力者は警察や政府などの公的機関

性加害を認め、謝罪して救済すればすむ話なのだろうか。提言も、人権方針の策定や研修実施、ガバナンスの強化などごく標準的・表面的な内容にとどまっている。結局、話を小さく収めたい事務所の意向から大きくそれたようには思えない。元検事総長だった林眞琴・同チーム座長は、これが本当に包括的調査の必要ない事案だと考えているのだろうか。

第二の協力者は、この件について、頑として調査や捜査をしない政府や警察、国会などの公的機関だ。現在の混乱ぶりを見ても、もはや再調査をジャニーズ事務所に任せるのは無理だ。公的機関の介入の必要性が高まっている。