昔から水害を起こしてきた妙正寺川
そこから上流に向かって行くと一つ目の橋が「宮田橋」で、その次が「落合橋」である。この落合橋のやや上流あたりが、神田川と妙正寺川が合流していた地点である。現在は流路変更により妙正寺川は暗渠(高田馬場分水路)に入り、新目白通りの地下を流れて神田川に合流しているが、両河川が落ち合っていたのは、間違いなくこの落合橋の付近であった。
この神田川の流域の「市街化率」(宅地に占める建物敷地の割合)は97パーセント(2009年度)で、全国トップと言われる。簡単に言えば、流域のほとんどが建物で覆われ、降った雨の大部分が神田川に流れ込むということになる。神田川に代表される都市河川はコンクリートで固められているため、逃げ場のない水は容易に護岸を越えて浸水の被害を引き起こす。
とりわけ妙正寺川は昔からしばしば水害を起こしてきたことで有名だ。近年では2005(平成17)年9月、台風14号によって時間雨量100ミリを超える降雨によって浸水の被害を引き起こしている。そのような事情を鑑みて、東京都では早くから妙正寺川に「調節池」の建設を進めてきた。
調整池によって水害を防げるように
仏教哲学者井上円了によって精神修養の場として造られた哲学堂公園に沿って「妙正寺川第一調節池」「第二調節池」があり、少し下って「上高田調節池」、そして「落合公園」の下には「落合調節池」が整備されている。これらをまとめて「妙正寺川調節池群」と呼んでいる。
調節池は溢れた川の水を一時的に貯留して水害を防ぐものだが、第二調節池は深さ23メートル、最大で10万立方メートルの水を貯めることができるという。これは小中学校の25メートルプール270個分に相当すると言われている。
落合公園の地下には上部下部の二段構造の調節池が造られており、上部だけで5000立方メートルの水を貯めることができるという。この調節池のお陰で、2019(令和元)年10月の台風19号の豪雨にもかかわらず、神田川水系は水害をまぬかれた。神田川・妙正寺川の流域は新宿区のハザードマップでも危険地帯になってはいるが、昔から情緒溢れる地域でもあった。