生理痛の軽視で多くのものを失う女性たち

毎月必ずやってくる耐えがたい痛みのために、より負担の少ない仕事へ転職したり、責任のあるキャリアの道をあきらめたりする女性たちは、少なくありません。なかには、休職や離職を考える女性もいます。

実際に、同じ「『働く女性の健康推進』に関する実態調査」によると、「女性特有の健康課題・症状が原因で休職や退職を考えたことがある」という女性は、30.3%いました。その理由の内訳を見ると、30.9%は「妊娠・出産に関する症状・疾病」、26.1%が「メンタルヘルス」、15.8%が「月経関連の症状や疾病」、13.3%が「PMS(月経前症候群)」でした(図表3)。

【図表3】休職や退職を考えた際の健康課題の内容(従業員女性)
邱紅梅『生理痛は病気です』より

ジーンズが赤く染まるほどの過多月経

これを聞くと、生理の悩みがない女性や男性は、「生理ぐらいで大げさな!」と思うかもしれません。しかし、毎月、鎮痛剤を飲んでも治まらないような痛みに耐えながら業務についたり、やむなく会社を休んだりを繰り返すことから、精神的な負担も膨らんで、メンタルを病んでしまう人もいます。

毛布の下で眠っている若い女性
写真=iStock.com/izusek
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私のところへ相談にいらしたある20代後半の女性は、毎月、吐き気を伴うほどの生理痛に悩まされていました。その女性は当時、長時間労働が常態化しているマスコミの企業に勤めており、「生理休暇を取るなんて、とてもできない空気」と、どんなにつらくても会社へ行く生活を続けていたのです。満員電車での通勤中に途中下車し、そのまま駅のベンチで動けなくなったことが何度もあると話していました。強い眠気も伴い、考えることができなくなって、仕事の能率がひどく低下することにも困っていました。

この女性は、経血量の多い「過多月経」にも悩まされていて、あるときは通勤中に、ジーンズの後ろ側が真っ赤になるほど出血してしまったこともあったといいます。仕事中も「漏れているかも……」と気になってしまい、業務で長時間トイレに行けないときはヒヤヒヤしていたそうです。