重い生理痛がある人がほぼ必ずもつ特徴

毎月の大量出血のために深刻な貧血も見られ、「当時はやたら氷を食べていた」と話していました。氷を食べたいという強い衝動があるこの状態は、「氷食症ひょうしょくしょう」と呼ばれる一種の異食症で、鉄欠乏性貧血のある女性に多く見られるものです。

邱紅梅『生理痛は病気です』(光文社新書)
邱紅梅『生理痛は病気です』(光文社新書)

彼女は生理痛や貧血でフラフラのまま、特に治療をすることもなく、負担の重い仕事を続けていました。そしてたまたま、担当した企画の取材で私のところへ訪れたのでした。

彼女の舌裏を診せてもらったところ、青紫に蛇行する血管がはっきりと見られました。これは、体が中医学でいう「瘀血おけつ」という状態にあることを示しており、重い生理痛がある女性たちには必ずといってよいほど見られる特徴です。血の巡りが悪いために、肩こりや頭痛があり、体温が維持できないことから、ひどい冷え性を持っていることもよくあります。その女性も、手足が氷のように冷たい状態でした。

自分の体が病的であることに自覚がなかった彼女は、驚きながらも、すぐに調剤した生薬を飲み、指導した生活改善を始めてくれました。その結果、数カ月でずいぶんと元気を取り戻しましたが、30歳を迎えたところで、「生理のたびに2、3日会社を休むことはとてもできない」とのことで退職し、フリーランスとしてマイペースに働くことを選びました。

その後、生理痛や過多月経もほぼ改善し、結婚して3人の娘さんを産みましたが、「あのときに退職していなかったら、体を壊していたと思う。こうして子どもを持つこともできなかったかもしれない」と話しています。

邱 紅梅(きゅう・こうばい)
漢方専門桑楡堂薬局代表

1962年中国生まれ。漢方専門桑楡堂そうゆどう薬局代表。北京中医学院(現・北京中医薬大学)医学部中医学科卒業後、同大学漢方専門外来で婦人科、小児科の医師として勤務。同時にWHO国際伝統医学協力センター(北京)の中医学基礎講師を務める。89年に来日。92年東京学芸大学大学院生理・心理学修士取得。現在は漢方相談の傍ら、中医学の普及のために日本国内、北京の母校で講義を行なう。著書に『わかる中医学入門』(燎原書店)、『生理で診断 体質改善法』(家の光協会)、『春夏秋冬 自分で不調を治す 漢方的183のアイディア』(オレンジページムック)、共著に『問診のすすめ 中医診断力を高める』(東洋学術出版社)などがある。