妻が夫よりも稼ぐと家庭不和の原因になるのか
日本では他の先進国と比較して、性別役割分業意識が強いと指摘されています。この性別役割分業意識にはさまざまなものが含まれていますが、典型的なのが「男性=仕事、女性=家事・育児」という考えです。
この性別役割分業意識には他にもさまざまな考えが含まれますが、その一例として「妻は夫よりも稼ぐべきではない」が挙げられます。この考えの背景には、「お金を稼ぎ、家計を経済的に支えるのは夫の仕事であり、その領域に妻が踏み込み、夫よりもお金を稼ぐようになると、夫のメンツが潰され、家庭不和の原因になる」というメカニズムがあると考えられます。
この考えは昭和の時代には説得力があり、多くの人が納得するものでした。しかし、この考えは、今でも影響力があるのでしょうか。
結婚相手の経済力を考慮する男性が約5割
昭和の頃は、今よりも男女間賃金格差が大きく、男性片働きが一般的でした。しかし、平成から令和への時代の流れの中で、女性の社会進出が進み、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回るようになりました。今では結婚・出産後も働く女性は珍しくありません。
また、バブル崩壊以降、低経済成長が続き、所得が伸び悩む中、社会保険料が引き上げられたため、可処分所得も減少しています。使えるお金が少なくなった家計において、妻の稼ぎは以前よりも重要度が増したと予想されます。
さらに、男性の考えも変化しています。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によれば、独身男性が結婚相手の条件として経済力を考慮する割合は、年々増加しているのです。図表1にあるとおり、1992年では26.7%の独身男性が結婚相手の経済力を考慮していましたが、2021年ではこの割合が48.2%にまで上昇しています。図表1には独身男性が結婚相手の学歴や職業を考慮する割合も示していますが、経済力がこれらの値を追い抜いた形になっています。つまり、今の男性は、「女性がどんな学歴でどんな職業か」という点よりも、「いくら稼いでいるのか」という点をより気にするようになったわけです。
以上の点を考慮すれば、「妻は夫よりも稼ぐべきではない」という考えの影響力は小さくなっていてもおかしくありません。はたして実態はどうなっているのでしょうか。