家事・育児時間の増加は少子化の原因の1つ

坂本准教授と森田教授の分析から、リーマンショック以降、日本の既婚女性はより外に働きに出るようになったものの、性別役割分業意識の影響から家庭内における家事・育児に縛られ続けているといえます。

性別役割分業意識は私たちの社会に深く根差しており、目には見えませんが、その影響は大きいものです。この分業意識が女性の家事・育児負担を増大させ、少子化の原因の1つにもなっているため、その解消をより真剣に検討していくべきでしょう。

(*1)Sakamoto, K., &Morita, Y. (2023). Gender identity and market and non-market work of married women: evidence from Japan. Review of Economics of the Household.
(*2)Akerlof, G. A., &Kranton, R. E. (2000). Economics and identity. The Quarterly Journal of Economics, 115(3), 715–753.

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。