厚労省の責任

このとき、矢面に立たされたのが厚生労働省の役人たちです。ワクチン行政に関わる役人というのは、何も一生ワクチン行政に関わるわけではありません。数年で配置転換があるからです。ところが、子宮頸がんワクチン叩きにあった役人たちは国民やメディアに叩かれ、ワクチン被害者には裁判を起こされてしまい、いわば役人としてのキャリアをつぶされてしまいました。

もちろん、本来であればそこで踏ん張るのが役人の仕事ではあるのですが、たまたま自分がワクチン行政に関わったほんの1、2年でこれだけ責められるのであれば、厚労省はもう何もしないでワクチンから手を引くという結論に至ったわけです。

そのため、日本はワクチン行政が滞ってしまったのです。すると製薬会社も「ワクチンを開発しても、どうせ厚労省も承認してくれないよね」となり、日本はワクチンをつくりづらい国になってしまったのです。

中央合同庁舎第5号館(写真=文部乱/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
中央合同庁舎第5号館(写真=文部乱/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

行政の重い腰

現在、塩野義製薬や第一三共などが国産ワクチンを申請中ですが、ワクチンを開発すれば、ある確率で副反応は出る。これは科学(医学・薬学)の世界では常識とされていることです。それはいわばワクチン開発の宿命だといえます。

そのかわり数万、数十万人の命を救うことができるのです。今回の新型コロナに関しても、多くの感染症の専門家たちが「パンデミック級の感染症が来るかもしれない」と警鐘を鳴らしていましたが、行政はなかなか重い腰を上げられなかった。とにかく、日本にはワクチンを開発するような体制はできてなかったということです。

子宮頸がんワクチンにともなう「多様な症状」については、ワクチンを接種した人にもしなかった人にも症状が見られるという研究報告があり、ワクチンを打ったから「多様な症状」が出るという因果関係は科学的に証明されていません。