「出さない手紙」を書くことで感情を整理する

言葉をたくさん知ること、丁寧な表現を使うこと。

そのあとに、大切なことがあります。

「自分の気持ちを知ること」です。

その一つの方法として、「出さない手紙」を書いてみることをおすすめします。言葉を文章にすることで、心にある感情を整理することができます。

女子学生の手の書き込みのクローズアップ
写真=iStock.com/slav-
※写真はイメージです

自分がいま、どんな気持ちでいるのか。悲しいのか、嬉しいのか、怒っているのか。文章にしようとすることで、心をつぶさに観察できます。

私は中学生の頃から日記を書きはじめました。公開・非公開とさまざまですが、いまはブログを書き続けています。思春期の心にあった「モヤモヤ」とした感情、それを言語化することで、やっと受け止められた。感情を整理するために書きはじめたのがきっかけでした。そのまま、いまに至っているわけです。

ところで、いま私、「『モヤモヤ』とした感情」と言いました。よく使われる言葉ですが、どんなイメージをお持ちですか? 心のなかにモヤがかかったような、景色が見えにくい状態でしょうか? もしくはふわふわとした形にならないようなものを指しているのでしょうか?

心にある感情の整理は戸棚の整理とよく似ています。

戸棚からいちどものを出し、きれいに拭きあげ、再び収納します。

頭が感情でいっぱいになるのは「言語化」できていないから

言葉にならないモヤモヤとした感情は、立方体でも円柱でもないフワフワとした雲や霧のようなものだとイメージしてみましょう。逆に、言語化できている感情には、立方体や円柱のように、きっぱりとした形があります。明確な形があるので、戸棚のなかで、積んだり寄せたりして整理整頓しやすいものです。一方で、モヤモヤとした感情は、積みにくいし、置き場所が定まりづらく、余計な場所を取ったりします。

心や頭のなかが、ある感情でいっぱいになってしまう。

それは、その感情を、言語化できていないからです。

脳内が一つの感情でいっぱいになってしまうと、日々の活動や意思決定のスピード、方向性にも影響を与えてしまいます。

そんなときに、頭を整理するための「出さない手紙」を書きます。

仕事のトラブルや、家族とのいさかい、どうしようもない片想い、人との別れなど、感情が激しく動くとき、そのほとんどは人間関係に由来します。何か解決できていない、伝えきれていない言葉が心のなかで燻くすぶっている場合、それを吐き出さないまま、過去のことにするのはなかなか難しいのです。

だから「出さない手紙」を書いてみるのです。手紙は誰かに見られるわけではないので、何を書いても構いません。

一つだけ大切なことは、自分の気持ちに素直になること。

自分がいま、どんな気持ちなのか。どんな複雑な感情があるのか、心に向き合い、伝えきれていない何かを、自分のために、丁寧に言葉にしてあげましょう。