とはいえ、夫の転勤で九州に行くことになった女性社員が、特例としてリモート勤務を認められ、働き続けるというケースもあり、状況に応じて柔軟に制度が用意されるよう。また、若い社員が多く、子どもが1人いる人はいても、2人いる人はほとんどいない。赤木さんは「子どもを2人抱えて職場復帰した場合、どう働いていけばいいのか今は想像がつかない」という。しかし、前例がないなら、前例をつくっていけばいいだけのこと。困ることがあっても、そのつど、調整できる環境なら、よい働き方を見つけていくことができるのだろう。
「現場の声が正しい」とする岩槻社長の方針に支えられ
企業向けのコンサルティング会社から、11年に中途入社し、現在はレバレジーズメディカルケア取締役の森口敬さんにレバレジーズの意思決定のプロセスについて聞いてみた。
「岩槻(知秀さん)が大学卒業と同時に起こしたのがレバレジーズ。岩槻は会社勤めの経験がないまま社長業を行っていますが、『現場が言うことがいちばん正しい』と考えているので、客観的でも主観的でも現場の意見を事実として捉え、対処していきます。声を上げやすい環境なので、社員が社長に直接提案して、知らぬ間に制度化されていることもあります」
現場の声がトップに届きやすい環境であることも働きやすさのひとつ。風通しのよい会社は働きやすいというが、まさにそのとおりのようだ。取材を進めるなかでも、会社と従業員、上司と部下といった立場の違いを感じることはなく、「共に成長する喜び」にあふれ、「顧客の創造を通じて関係者全員の幸福を追求し、各個人の成長を促す」という企業理念をよく体現しているように感じる。
「僕が入社した当時は、社員数100人ほどのまさにベンチャー企業。当時から、昇格も企画立案するうえでも、年次・年齢、男女差はなく、機会は常に均等でした。結果も重要ですが、それ以上にリーダーとして活躍できるか、メンバーを生かすことができるか、組織をよくしていくマインドをもっているかが重視されていました。それは今も同じ。現在、評価制度もありますが、それを基準に抜擢しているわけでもなく、『彼女・彼ならきっとやってくれる』と、本人の将来性を見て抜擢しています」(森口さん)
“働きがい”を求める人、昇進に“やりがい”を感じる人にとっては最高の環境ではないだろうか。世間には昇格を望まない女性が6割いるといわれるが、レバレジーズグループでは1~2割ほどだという。活躍の場を求めて入社してくる社員がいかに多いかがうかがえる。また、その1~2割の社員も、周囲の活躍を見て意識が変わっていくのだという。同グループの働きがいの秘密は、活躍できる場ゆえのこと。早期抜擢は、その結果でしかない。
創業者である岩槻社長は42歳(22年9月現在)。40代以上の社員はほぼおらず、ミドル世代以上の実情は見えてこないが、“人”の価値に目を向け、そのポテンシャルに投資する社風があれば、会社と社員が共に成長しながら、今までにない企業スタイルを築いていけるのだろう。
撮影=田子芙蓉