2005年の創業以来、高い成長率を維持し続けるレバレジーズグループ。早くから裁量権を与えられ、リーダー職に就くまでの平均期間は2年3カ月。早期抜擢システムゆえにチャレンジしたい若手が集い、その活気が新事業推進をパワフルに推し進めている。そんな同グループでの“働きがい”を探ってみた。
レバレジーズ オフィス

女性社員に対して、特別なことは何もしていない

Web・IT業界のエンジニアと企業をつなぐ事業を基軸に、創業から17年間快進撃を続けるレバレジーズグループは、2021年から2年連続で“日本における「働きがいのある会社」女性ランキング 大規模部門”1位(※)を獲得。その理由として挙げられているのが“早期抜擢ばってきシステム”。現場の様子を取材してみた。

14年、レバレジーズに新卒入社後、入社1年目で最年少事業部長、入社4年目、25歳で最年少執行役員に抜擢された藤本直也さんに女性の働く環境について伺った。

「女性が働きやすい環境だと褒めていただいていますが、働く環境においては、年次・年齢、男女で同じなんですよ。女性ならではのライフイベントへのケアは徹底していますが、特別なことは何もしていません」

※働きがいのある会社研究所選出。

できる人間にできる仕事を任せても、会社も個人も成長しません

若い社員が多いだけに、家庭と仕事を両立する女性が少ないこと、急成長ゆえの人材不足から早期抜擢を行わざるを得ないという背景もあるのではないかと問うと、「わが社は外部資本のない、社長が100%オーナーの会社。今、従業員数1400人ほどなので、役員が20人くらいいてもおかしくありませんが、役員は社長と僕だけ。だから、経営の自由度が高いのは確かです。ですが、創業17年、年130%の成長率を上げる中、社員数はずっと増え続け、売り上げも従業員数も3年で2倍に。うちは“人は抜擢しないと成長しない”という考えですから」との回答を受け、腑に落ちた。

社員数の変遷
抜擢までの最短期間

同グループのリーダー職に就くまでの平均期間は2年3カ月。早い時期から責任ある仕事を任せていかないと、社員も会社の成長についていけないのだ。「そもそも、できる人間にできる仕事を任せても、会社も個人も成長しませんし、できなくても、信じて任せるからこそ人は成長するのです」(藤本さん)と、早期抜擢がやりがい創出につながるようだ。そのぶん、研修などの教育制度を充実させてフォローしているのかと考えたが、「リーダー研修はありますが、研修でリーダーは育ちません」と、藤本さんは断言する。しかし、早期抜擢にリスクはついて回る。どんなに優秀な人材だとしても、だ。

レバレジーズ 執行役員 藤本直也さん
レバレジーズ 執行役員 藤本直也さん

「失敗してもいいんですよ。上司が目を配っていますし、誰かがカバーしますから。僕たちの仕事の失敗は、“失敗”ではなく、“事業の停滞”。新規事業を軌道にのせるために、今月、来月うまくいかなくても、半年後にうまくいっていればいいんです。また、本人がどう思っているかを重視するので、失敗して『リーダーを辞めたい』と言うのなら降格させますが、絶対にやりきりたいと言うなら継続させます。そういう人間は、最後にはやり遂げるし、部下もついていきますからね」という藤本さんの言葉に、同グループが急成長している理由があるのだろう。

社員の成長が会社の成長につながることを知っているからこそ、早期抜擢によるリスクをものともしないのだ。

15年度新卒入社、レバレジーズメディカルケア、メディカルキャリア事業部のグループマネージャーを経て、現在、第2子を出産し育休中の赤木香澄さんに、抜擢されるまでの様子を教えてもらった。

レバレジーズメディアカルケア メディアカルキャリア事業部 グループマネージャー(現在育休中)赤木香澄さん
レバレジーズメディアカルケア メディアカルキャリア事業部 グループマネージャー(現在育休中)赤木香澄さん

「基本的に意欲の高い社員が多く、月1回の上司とのミーティングで『リーダーになりたい』と伝えておくと、『こういう視点が足りないから、ここを改善しておかないと、リーダーになったら苦労するよ』とフィードバックをもらえるんです。メンバー時代に教育してもらえるので、リーダーに抜擢されても即戦力として働ける下地が備わるんです」

藤本さんが、「会社の成長を止めないためにはリーダーを生み出し続けなければならない」と話すように、会社全体でリーダー育成に対する目配りがされているよう。

失敗を次に生かせるなら、それは失敗ではない

「レバレジーズが早期抜擢ゆえに働きがいがあると言われているのなら、僕の意見は少し違います」というのは、19年度新卒入社4年目、マーケティング部プロモーションチームで採用プロモーション責任者兼看護領域ブランド担当チームのグループリーダーを務める千葉祐斗さんだ。

レバレジーズ マーケティング部 プロモーションチーム 採用プロモーション責任者兼看護領域ブランド担当チーム グループリーダー 千葉祐斗さん
レバレジーズ マーケティング部 プロモーションチーム 採用プロモーション責任者兼看護領域ブランド担当チーム グループリーダー 千葉祐斗さん

「入社半年くらいのとき、Web広告の運用を失敗して1000万円ほど損失を出してしまいました。でも、うちでは、大切なのは『なぜ失敗したのか』を掘り下げ、同じ失敗を繰り返さないよう、次につなげることだとされています。失敗を恐れずチャレンジできる環境に、とても満足しています」という。

社員の話を聞いていると、“働きやすさ、働きがい”とは何だろうか? と考えさせられる。残業なしで終える一定の仕事量、報酬の高さ、成果を問われない業務内容、そういったものを“働きやすさ”とするのなら、同社社員が話す“働きやすさ、働きがい”とは違うようだ。千葉さんのように新しいことにチャレンジしたいと考える人にとっては、最高に“働きがい”のある環境なのだから。

「若手でも事業規模の大きな案件を扱えるのが魅力。成功も失敗もすべて自分の責任。それが僕にとっていちばん働きがいのある点。それに、土日はちゃんと休めるし、日中、集中して仕事に取り組めば残業することもほとんどありません。もし、絶対的に仕事量が多いのなら上司に相談すれば調整できるし、『気合で乗り切れ』なんて言われることはありませんから(笑)」(千葉さん)

千葉さんは、早期抜擢システムを否定しているのではないし、出世欲がないわけでもない。事業を成功させるために肩書が必要であれば受け入れるし、そうでなければ断るという。千葉さんの周りも仕事を楽しみたい人が多いため、昇格の打診があっても、「今のプロジェクトがおもしろいから」と断る人もいれば、「彼のほうが向いているから、彼を抜擢してください」と逆指名することも。同社では、会社のビジョンや事業目標を追うことを大前提に、自分のやりたいことが尊重される環境が整っているのだ。

働きやすさは、他者貢献の意識ゆえ

早くから裁量権をもてることに魅力を感じている社員が多いということはわかった。では、実際に早期抜擢され、活躍している女性社員の本音はどうなのだろうか。17年度新卒入社、2年目でグループリーダー、入社3年目でグループマネージャー、6年目にしてレバテック、ITソリューション事業部で200人もの部下をマネジメントする事業部長に昇格したばかりの小池澪奈さんは、「グループリーダー、マネージャーを経験して、“事業づくり”と“組織づくり”のどちらも楽しいと思えるようになっていたので、部長職を任されると聞いたときはとてもワクワクしました」と話す。

レバテック ITソリューション事業部 事業部長 小池澪奈さん
レバテック ITソリューション事業部 事業部長 小池澪奈さん

しかし、グループリーダーやマネージャーとは部下の数も事業規模も違う事業部長職の責任の大きさに腹をくくる必要があると感じたため、他事業部部長や先輩女性にヒアリングしてまわったという。

「『働きづらさとは何だろう?』と考えると、わからないことがあったときに気軽に聞けないこと、人との会話から気付くこと、発見できることがない環境だと思うんです。でも、ここには他者貢献の考え方が染みついていて、自分の時間を他人に使うことを嫌がる人がいないから気後れせずに聞きに行けるし、皆、成長意欲が高いので、会話の中からいろんなアイデアを拾えるです」(小池さん)

 “わからないことを聞ける環境”とは、当たり前のことのように思えるが、自分のことで精いっぱいの社員ばかりの環境では、「相手の時間を奪ってはいけない」と、聞きたいことも聞けず、ひとり悩み苦しむ人は多い。理不尽なことだが、そんな状況はよくあること。そういった環境では不満が生まれるのはもちろん、我慢を強いられることで、働きづらさにつながっていくのだ。

子どもを抱えて働く女性がまだ少ない現状

どんなに働きがいがあっても、女性にはキャリアの中断を避けて通れないライフイベントが待ち構える。産休・育休までにキャリアを築いても、職場復帰後に停滞することも。しかし、女性の働き方にこそ早期抜擢システムが合うと、藤本さんは語る。

「20代後半でライフイベントを迎える女性が多いのなら、それまでにリーダー職を経験しておけばいいだけ。事業責任者だったり、マネージャーだったり、いろんな経験をしておけば、職場復帰したときの即戦力になります。だからといって、そこに男女差はありません。男女共に早期抜擢を前提に、20代後半までに何かしらのリーダー職を経験できる環境になっているだけなのです」

社員の平均年齢は27歳。子どもをもつ社員は多くない。第2子育休中の赤木さんに様子を聞いてみた。

「入社3年目でエリアマネージャーに昇格したのですが、第1子妊娠中だったので、着任半年で産休に入り、1年半で同部署、同役職に復帰。22年春から第2子の産休に入りました。第1子のときも今もキャリアの中断に不安はありませんでしたし、第2子は4歳差を望んでいたので予定どおり。仕事のためにプライベートを犠牲にする気はありませんでした」

自分の選択でキャリアを築いていけるというのだろうか。「産休に入る前に私の仕事を認められてよかったと思っています」と赤木さん。仕事もプライベートも理想をかなえているようだ。また、赤木さんの夫もグループ会社の社員で、現在、3カ月間の育休中。第1子誕生後、赤木さんは夫と時差出勤していたので、仕事と育児の両立に困ることはなかったそう。コロナ禍で、世間では家庭と仕事の両立のためにリモート勤務を望む女性社員は多いが、同グループでは「出社したほうが成果が出せる」と、多くの社員が出社を希望するそう。

ライフイベントへのフォロー体制

とはいえ、夫の転勤で九州に行くことになった女性社員が、特例としてリモート勤務を認められ、働き続けるというケースもあり、状況に応じて柔軟に制度が用意されるよう。また、若い社員が多く、子どもが1人いる人はいても、2人いる人はほとんどいない。赤木さんは「子どもを2人抱えて職場復帰した場合、どう働いていけばいいのか今は想像がつかない」という。しかし、前例がないなら、前例をつくっていけばいいだけのこと。困ることがあっても、そのつど、調整できる環境なら、よい働き方を見つけていくことができるのだろう。

「現場の声が正しい」とする岩槻社長の方針に支えられ

企業向けのコンサルティング会社から、11年に中途入社し、現在はレバレジーズメディカルケア取締役の森口敬さんにレバレジーズの意思決定のプロセスについて聞いてみた。

レバレジーズメディカルケア 取締役 森口 敬さん
レバレジーズメディカルケア 取締役 森口 敬さん

「岩槻(知秀さん)が大学卒業と同時に起こしたのがレバレジーズ。岩槻は会社勤めの経験がないまま社長業を行っていますが、『現場が言うことがいちばん正しい』と考えているので、客観的でも主観的でも現場の意見を事実として捉え、対処していきます。声を上げやすい環境なので、社員が社長に直接提案して、知らぬ間に制度化されていることもあります」

現場の声がトップに届きやすい環境であることも働きやすさのひとつ。風通しのよい会社は働きやすいというが、まさにそのとおりのようだ。取材を進めるなかでも、会社と従業員、上司と部下といった立場の違いを感じることはなく、「共に成長する喜び」にあふれ、「顧客の創造を通じて関係者全員の幸福を追求し、各個人の成長を促す」という企業理念をよく体現しているように感じる。

「僕が入社した当時は、社員数100人ほどのまさにベンチャー企業。当時から、昇格も企画立案するうえでも、年次・年齢、男女差はなく、機会は常に均等でした。結果も重要ですが、それ以上にリーダーとして活躍できるか、メンバーを生かすことができるか、組織をよくしていくマインドをもっているかが重視されていました。それは今も同じ。現在、評価制度もありますが、それを基準に抜擢しているわけでもなく、『彼女・彼ならきっとやってくれる』と、本人の将来性を見て抜擢しています」(森口さん)

“働きがい”を求める人、昇進に“やりがい”を感じる人にとっては最高の環境ではないだろうか。世間には昇格を望まない女性が6割いるといわれるが、レバレジーズグループでは1~2割ほどだという。活躍の場を求めて入社してくる社員がいかに多いかがうかがえる。また、その1~2割の社員も、周囲の活躍を見て意識が変わっていくのだという。同グループの働きがいの秘密は、活躍できる場ゆえのこと。早期抜擢は、その結果でしかない。

創業者である岩槻社長は42歳(22年9月現在)。40代以上の社員はほぼおらず、ミドル世代以上の実情は見えてこないが、“人”の価値に目を向け、そのポテンシャルに投資する社風があれば、会社と社員が共に成長しながら、今までにない企業スタイルを築いていけるのだろう。

「働きがいのある会社」女性ランキング大規模部門