ポジティブな言葉かけは逆効果
自己啓発本を読むと、自分自身にポジティブな言葉かけをしましょう、といったことが書かれています。
「私なら、絶対にうまくいく」
「私は、だれからも愛される」
こんな感じのことを、自分に言い聞かせるといいよ、というのですね。
けれども、こういうポジティブな言葉かけは、自信のない人はやらないほうがいいのです。なぜなら、もっと落ち込んでしまうから。
自信のない人は、「私なら、うまくいく」と思い込もうとしても、すぐに「でも、次もやっぱりダメなんだろうな……」と否定してしまいます。
ようするに、ポジティブになろうとすると、かえってネガティブになってしまうのです。
カナダにあるウォータールー大学のジョアン・ウッドは、249名の大学生に自尊心を測定するテストを受けてもらい、さらにポジティブな言葉かけについて、「役に立つと思いますか?」「気分がよくなるというより、逆に悪くなることもありますか?」と聞いてみました。
すると、図表1のような結果になりました。
データを見ればわかる通り、ポジティブな言葉かけは、「自信のある人」には効果的なのですよ。けれども、自信のない人には逆効果なのです。
自信のある人は、すでに自信があるわけですから、ポジティブな言葉かけなど、本当は必要としていません。ポジティブな言葉かけが必要なのは、むしろ自信のない人でしょう。ところが、自信のない人は、ポジティブな言葉かけをしようとすると、どうも裏目に出るようです。
読者のみなさんも、もし自分自身にポジティブな言葉かけをやってみて、かえって気分が落ち込んでしまうようなら、ポジティブな言葉かけをやめたほうがいいですよ。自己啓発本にはポジティブな言葉かけがいいと書かれているかもしれませんが、やらないほうがいい人もいるのです。
何回かポジティブな言葉かけをやってみて、「自分には向かないな」と思ったら、別のやり方で自信をつけるようにしてください。
自信をつける方法は、いくらでもありますから、ポジティブな言葉かけにこだわらなくても大丈夫なのです。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。