映像作品に出て自分を残していきたい

こういう病気になってから、20代のころにしていた享楽的なことがほとんどできなくなりました。タバコ、お酒はもちろん、現在は「ノーソルト(無塩)」の生活を送っています。これは2回目のコロナ感染後、ウイルス性の胃腸炎で高熱が出た際に腎機能が低下してしまったことが原因でした。家族と外食に行っても、自分だけお願いして調味料を使わないメニュー。素材そのものを楽しむほかありません(笑)。傍から見たら、何が楽しくて生活しているのかという感じですけど、僕は「今が一番幸せです」と断言できますね。

これは病気になってから明らかに変わった価値観で、病気前に「幸せ」と感じていたことは、振り返れば一瞬の出来事。周りの人の助けによって生きながらえている今は、毎日仕事して、過ごしているだけで幸福感に満たされています。

今、仕事とか、この先の人生を考えて憂いている人は結構いると思うんですけど、誰も未来なんてわからないんだから、「今日も生きていて幸せだ!」くらいに思っていてほしい。僕なんて、みなさんが食べているカップ麺もたまにしか食べられないわけで(笑)。自分を騙すぐらい、底抜けにポジティブなマインドを持っていると、不安とか心配ごとなんて杞憂に終わりますよ。自分は、最後の死ぬ瞬間までそうありたいですね。

もう先輩方はどんどん亡くなっていっているんですが、葬式にはあまり行かないようにしていまして。行ってしまうと、その人の「死」を認めたような気になるから、どうも抵抗があるんですよね。ずっといい思い出のまま、「今は会えないけど、きっといつかまた会える」っていう気分でいたい。だから電話番号も消さずにそのままにしていたりします。僕のときも、家族だけでこぢんまりやってもらって、友人たちは呼ばないでほしいなあ。

今のライフサイクルとしては、レギュラーのDJに加えて、バイクや車など、好きなものに囲まれているこのガレージでインスタライブをしたり、『Clubhouse』で話したりしています。家族からしても、家にいなくていいから、元気で好き勝手にやっていてほしいみたいです(笑)。そりゃ、塩分が摂れない人と食卓を囲むのも気を使うだろうし、自分としても性に合った時間の使い方です。

ケイ氏のガレージ兼趣味部屋。自宅にいるときはここで過ごすことが多いという。インスタライブや『Clubhouse』の配信も、この場所で行っている。
ケイ氏のガレージ兼趣味部屋。自宅にいるときはここで過ごすことが多いという。インスタライブや『Clubhouse』の配信も、この場所で行っている。(藤中一平=撮影)

今後は、ドラマとか映画など、自分の声や姿が作品として残せればと思っていますね。孫にも「これがおじいちゃんだよ」と言いたいので。正直、撮影で何時間も待つようだと、自分の体力が持たないと思うので(笑)。だから通行人役とか、それこそDJとか、ちょっとした役柄でもいいんです。

昔、木村拓哉さんが主演して大ヒットした『ロングバケーション』というドラマでも、ラジオDJとして声出演したこともあるんですよ。僕の番組のリスナーって、結構自分と近い年齢の人も多くて、末期がんの宣告をされた人とか、なぜか似たようなルートをたどっている人も多いんですが(笑)、そういう人たちを励ますために、いや“励まし合う”ためにも、自分の声で発信することだけはやめないようにしたいですね。

病気をしているリスナーには決まって同じことを言っているんです。「大丈夫、大丈夫。俺もあなたもいまこうやって生きているんだから、死ぬまでは大丈夫だよ」ってね。

底抜けなポジティブマインドで生きれば、不安や心配ごとも杞憂に終わる