高収入のビジネスマンが不全感から依存症になってしまったケース
健洋さんは、買い物依存とアルコール依存傾向でお困りとのことでご相談に来られました。
収入は良いとのことですが、車や外食、ギャンブルなどでむしろ200万円ほど借金をしているとのことです。仕事では完璧主義で、何もかもちゃんとしないと気が済まないそうです。後輩にもいつも厳しい態度で接しています。
努力をしない同僚や上司にはとても腹が立ちます。幼いころのお話を伺うと、母親は勉強ができると褒めてくれますが、テストの点が悪いときなどは褒めてもらえなかったそうです。95点を取ったとしても100点でないことを責められたとおっしゃいます。母親は親身に話を聞いてくれるような感じではなかったそうです。
幼いころは夫婦喧嘩が絶えず、健洋さんが5歳くらいのときに両親は離婚し、母親は女手一つで妹と健洋さんとを育ててくれました。
母親はご自身が自立してストイックに子育てをしてきたこともあり、お子さんに対しても自立するように厳しくしつけてこられたそうです。健洋さんが弱音を吐いても、母親には全く共感してもらえず、それも今につながっているのではないか、とおっしゃいます。
収入やステータスとなるものでしか認められない、ということから内心の不全感がお金やモノやお酒に向かっているのではないか、とご自身で分析しておっしゃいます。
発達段階での慢性的なストレスが原因に
内容は様々ですが、すべて発達性トラウマによると思われるケースです。各ケースについてほぼ共通しているのが、発達段階において、家庭や学校などで持続的・慢性的なストレスを受けてきたということです。
ある人は夫婦の不和、ある人は兄弟・両親・嫁姑など家族や親戚同士の揉め事に巻き込まれたり、親の過干渉や機能不全であったり、ある人はいじめやハラスメントを受けた結果であったりします。
そして、同じく共通するのが、生きづらさの原因がわからずに困っているということです。専門家に相談しようにもどこに相談していいかわからない。そもそも自分の苦しみをうまく言語化できない。生きづらさを表現する適切な情報もない。カウンセリングではとても良くなるようには思えない。かといって病院で治してもらえそうもない、と途方に暮れてしまっているのです。中には、「自分は発達障害では?」などと不安に思い、実際に検査、診断を受けているようなケースもあり、トラウマを負うと発達障害ととてもよく似た症状を呈することがわかっています。
大阪生まれ、大阪大学文学部卒、大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。在学時よりカウンセリングに携わる。大学院修了後、大手電機メーカー、応用社会心理学研究所、大阪心理教育センターを経て、ブリーフセラピーカウンセリング・センター(B.C.C.)を設立。トラウマ、愛着障害、吃音などのケアを専門にカウンセリングを提供している。雑誌、テレビなどメディア掲載・出演も多く、テレビドラマの制作協力(医療監修)も行なっている。著書に『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)、『プロカウンセラーが教える 他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)がある。