真正面に座るのは避ける

部下を評価するときは、伝える内容だけでなく、伝えるときの相手との位置関係=ポジショニングも重要です。どのポジショニングで話をするかによって、話の伝わり方や感じ方は変わるからです。これは「スティンザー効果」と呼ばれています。

相手との心の距離が最も近くなるのは、隣に座ることです。ただこれは、既に相手とかなり親密になっていることが条件なので、カップルが、カウンターで横並びに座ってお酒を飲んだりする場合などはよいのですが、上司と部下の関係では適切ではありません。

避けたいのは、真正面に座ることです。これは、緊張感や不安感、警戒感が高まり、対立関係になりやすいポジショニングです。評価面談などのように、相手に何かを注意したり、悪いところを指摘して改善を促す必要があるときには、あまり適当ではありません。

評価面談はオンラインより対面で

同じ理由から、評価面談などはできればオンラインは避けたほうがいいでしょう。オンラインはパソコンの画面越しに向かい合うことになるからです。部下が離れたところにいるなどの理由で、どうしてもオンラインで面談をする必要がある場合には仕方がありませんが、対面かオンラインを選べる場合は、できるだけ対面で行ってください。

そして、ベストなポジションは、90度の位置に座ることです。隣り合わせではなく、テーブルの角を使って座るイメージです。それが難しい場合は、真正面ではなく、席を一つずらして、斜め向かいに座るといいでしょう。

このポジショニングだと、相手の顔をしっかり見ることもできますし、自然に視線を外すこともできます。警戒心がとけて、お互いにリラックスしやすくなります。

病院の診察室も、たいていそのような形になっています。医者が、机をはさんで患者さんと正面に座って診察することは、あまりないと思います。机の上のパソコン画面でカルテを見て視線を外すこともあれば、少し角度をかえて患者さんの目を見ながら話しかける場面も多いはずです。そのことで患者さんから「正面から患者の顔を見ていない」とお叱りを受けることもありますが、実はポジショニングを考え、あえてこの角度で話をしていることも多いのです。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。